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小説
たくととせんり
「おーい!せんり、帰ろうぜー!」
「川島拓斗くん!もう少し待ちなさい!」


終わりの会が終わって、先生が『ではさようなら』の挨拶をすると同時に、隣のクラスのたくとが教室の扉をばーんと開けて大きな声で僕を呼んだ。
皆が礼をしている最中だったので先生に怒られる。いつものことだ。

「いーじゃん!せんせー、早くしてよー!今日こそシンガンレン倒さなきゃなんないんだから!」
シンガンレン、てのは僕たち小学生の間で大人気のポータブルゲーム、モンスターサバイバーに出てくる強敵だ。通信して、二人で協力して倒さなきゃならないくらい強い敵。たくととは毎日そいつを倒すために通信してる。そのために、早く帰りたくて仕方がないたくとは毎日こうやって終わりの挨拶の途中で教室に乗り込んでくるんだ。

「なあなあ、先生ってばー!早く終わらせてよー!」
「もう少しだから待ちなさい!小田巻くん、君もちゃんと川島くんに言いなさい!」

それで、たくとのせいで僕が先生に怒られるのも、いつものこと。


「もうっ、たくとのせいで僕も怒られちゃったじゃん!」
「何だよ、いーじゃんちょっとくらい!」

帰り道、ぷりぷり怒りながらたくとに文句を言う。僕のせいじゃないのに僕が先生に怒られるなんて納得行かないよ!でも、いつもいつも文句を言ってもたくとはちっとも聞いてくれない。
けろっとして逆に僕に文句を言ってくるんだ。

「よくないよ!なんで関係ない僕までいつも怒られなきゃなんないのさ!」
「そんなこと言ってもうれしいくせに!せんりは俺が好きなんだもんなー?」

人をバカにしたように笑って言うからすごく腹が立って。


「たくとが僕を大好きなくせに!」

「え」


同じように言い返してやると、たくとは一言だけ発したまま固まってしまった。なんなの?

「たくと?」
「…〜〜〜〜っ!」

不思議に思ってのぞき込むと、たくとはぼぼぼと音がでるんじゃないかってくらい急に顔を真っ赤にして駆けだした。

「あっ、たくと!?」
「す、好きじゃねーよ!ばーか!」

一度だけ振り返ってそう叫んで、僕を残して走っていってしまった。

「なんなの?」

一人残された僕は、今日はシンガンレン倒さないのかなーなんて考えながらたくとの走っていった道をぼんやり眺めて歩いて帰った。


end

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あきゅろす。
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