Non Stop部屋
3
「ハァ………ハァ……」
佐助は肩で息をしていた。
倦怠感に襲われながら重い瞼を開けると、
「……ハァ………」
同じように気だるそうに四肢を投げ出した政宗の姿が視界に入った。
「部長………大丈夫ですか?」
「ん………」
佐助は自分が組み伏せた相手を気遣うと、政宗は焦点の合わないぼんやりとした視線を天井に向けて返事をした。
「ちょっと待って下さい………」
佐助は身を起こして、デスクに乗っているドーナツの箱に入っている紙ナフキンに手を伸ばした。
(危なかったよなぁ…………もう少しで中出ししてたよ……)
佐助がちらりと見た白い素肌の上には、2人分の精液が飛び散っていた。
「ん………」
「いや、俺拭きますよ」
「いいよ………」
「あ………はい」
体を少し起こした政宗の差し出した手に紙ナフキンを渡した。
(何でかスゴイ興奮したよなぁ………)
政宗が拭おうとしている精液は、2人分とはいえ量が多かった。
佐助は自分の吐き出した欲の塊から目を背けながら、満足したように萎えた自身を下着に納めた。
「………どうした………」
「あ、いや別に………」
「…………男を抱いたことに後悔してんのか?」
「えっ!?」
佐助の気が落ちているのに気付き、目を伏せながら政宗はぽつりと呟いた。
「あ………いや………後悔は………」
佐助は鼓動が早くなるのが分かった。
「………イッて冷静になったろ?」
「…………そういう……わけじゃ………」
腹の上の精液を拭うその表情は読み取れず、佐助は不安で背中がチリチリとした。
「いや………凄く気持ち良かったし……何ていうか……………」
「…………」
「あの………俺………男を抱いたのは初めてで……それも相手が部長で気まずいけど………後悔はしてません」
いつもは飄々とした佐助だが、気のきいた台詞など言えず、本心を述べるに留まった。
「……………俺はしてるよ」
「えっ─────」
「お前なんかに抱かれるんじゃなかった」
政宗の一言に佐助の血の気は一気に引いていった。
「す……みません………俺ヘタクソでしたね」
「上手いか下手かなんて分かるかよ!………俺だって初めてだったんだ………!」
「はいぃぃ!?」
政宗の告白は衝撃的だった。
「………お前は見込みがあって気に掛けてたが………お前は俺を苦手としてたから冗談のつもりで………」
「嘘!?」
政宗は顔を手で隠して体を横に倒した。
「すみません………俺、本気にしちゃって………」
「いや………誘ったのは俺だ………」
「でも俺が乗らなきゃ………」
「俺も………引けなくなったんだ………」
政宗は苦しそうに言葉を紡ぐ。
「俺だってそっちの気はないし、初めてなのに………あんな喘いで………みっともねぇ………」
「ぁ…………」
色っぽく乱れて善がる政宗の姿を思い出して佐助は赤くなった。
「わけわかんねぇよ………お前とならヤッてもいいと思っちまって止まらなかったんだ………」
「え…………」
「ケツ痛ぇし、スーツは皺になるし、何だよあの丸まったズボン!………お前に感じたり、イカされたり………俺はお前の上司なのに………こんな醜態晒して………」
「部長………」
苛立つ姿に佐助は笑みが零れた。
「部長………顔見せてよ………」
「ぃ………やだ!!」
「部長………」
佐助は覆い被さり、政宗の腕を掴んだ。
「っ…………」
政宗は真っ赤になり、涙目になっていた。
「部長………やっぱり俺は後悔してないです………」
「…………クソ………」
佐助の笑みに悔しそうに、恥ずかしくて睨み付ける政宗が可愛らしく愛しく思えた。
「部長………出来の悪い俺に、もっと部長のこと教えて下さい………」
「……………しょうがねぇな………」
ようやく政宗はクスリと笑い、佐助の首に腕を回した。
「………後悔はしてないよ………」
2人は唇を重ねた。
甘いイベント日に、甘い上下関係が結ばれた…………
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