Non Stop部屋
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何で今年のバレンタインは土曜日なんだろ………


義理でも貰えたら嬉しいのに………
会社が休みじゃ義理すら貰えないじゃんね!



でもさ、こんな日に休日出勤してるなんて仕事熱心でしょ〜♪






……………




「あぁー!強がってごめんなさい!帰りたいよぉ!」

「ははは〜佐助お先〜」

「まだ行くなよぉぉお」

「これからデートなんだよ♪そんじゃ上司と2人で頑張れよ〜」

「ぁぁあ………」




次々に仕事を終えて帰っていく社員。


最後に笑顔で出ていった同僚に泣きそうになった。


ホント、強がってごめん。


広いフロアに俺1人。
やべ………泣きそう。



さっさと終わらせて飲み屋のオネーちゃんトコにでも行こっかな〜。

仕事さえ終われば………




「ってか終わんないよ!!」



デスクには書類の山脈。

こんな仕事を与える上司がムカツク………


俺より年下の伊達部長。
それもイケメン。
仕事がバリバリ出来て、
とても偉そう(偉いんだけど)
だけど、ホントに清々しい位に美形。




『ちょっと出てくる』


って言ったきり。

俺に仕事押しつけてお前はデートしてたなんて言ったら、俺ブチギレちゃうよ?


帰ってくる前に逃げちゃおっかなぁ〜………………







ガチャッ─────





「よぉ………進んだか?」

「ッ!……………あ………いえ………」



腰を浮かしかけた所で、見透かしていたかのような上司の登場に、佐助は嫌な汗が吹き出した。



「おい………」

「はい………?」



政宗が差し出した物………



「少し休憩しろよ」

「あ………りがとうございます」



コーヒーとドーナツだった。



「お前1人か?」

「えぇ………みんな帰っちゃいましたよ」

「そうか………」



2人では食べきれない量だった。



「………お前んち、甘いのが好きな奴がいたよな?持って帰るか」

「えぇ……よく知ってますね」

「誰かと話してるのを聞いた気がしてな」

「はは……喜びますよ」



プライベートは持ち込まないようなタイプの政宗が、自分のことを知っていて佐助は内心驚いていた。



「じゃ、遠慮なくいただきます」

「あぁ………仕事を手伝ったらお前のためにならないから、こんなことしか出来なくて悪いな」

「いえ………そんなこと………」



(ウソ………俺のこと考えてたなんて意外だな………)



スパルタではあるが、上司に思いやりがあることを知り内心少し嬉しくて照れくさかった。




(あ………ダブルチョコレート………)



隣のデスクに置いて広げた箱にはぎっしりと色んな種類が入っていたが、佐助はチョコレートのドーナツに手を伸ばした。



「いただきま〜す……」



一口食べて口の中に広がる甘さにホッとして笑みになる佐助だった。



「………それ好きなのか?」

「え………?」



政宗はデスクに腰を下ろして、佐助の手元を見つめていた。



「あぁ………これ?……いや、何となくバレンタインだからチョコ食べたくなっただけで………」

「………そうか………」

「今年は誰からも貰えそうにないんでね」



嫌味に取られるかな?と思いながらも愚痴を溢した。



「それ………俺からの気持ちだ………」

「えっ!?………あ、はい、差し入れなんて部下思いで優しいっすよね」



佐助は一瞬告白かと思ったが、そんなわけはないと考えを改めた。



「そうじゃない………」

「ぇ…………」

「もしお前がそれを始めに食べたら伝えようと思ってた………」

「な………にを………」



政宗の頬がほんのり赤い気がして、佐助は続きの言葉に息を飲んだ。



「んなもん全部言わなくても分かるだろ………」

「ぁ………」



カァっと赤くなり気まずそうに視線を逸らす姿に胸がきゅんとした。



(何これ………可愛い………)



佐助は唇を噛み締めて、初めて抱いた上司への感情を抑えようとした。



「いきなりで悪い………男にこんなこと言われたら困るよな………忘れろ…………ァ───ッ!?」



立ち去ろうとした政宗は手を掴まれて佐助の方を見た。



「あの………」



佐助は反射的に手が出てしまったのだが、言葉が整理出来ず、手にしていたドーナツを置いて立ち上がった。



「伊達部長……あの………俺のこと………」



自分より低い位置の瞳と視線が交わった。



「………あぁ…………気付いたら……好きに………」


想いを口にした途端、政宗は恥ずかしさで顔を背けた。



「ンッ─────」




佐助は乱暴とも言えるような手つきで政宗の顔を掴み上げ、唇を奪った。



「…………ン…………」



始めは体を強張らせた政宗だったが、佐助の首に腕を回し、佐助は政宗の体を抱き締めた。


佐助も政宗も舌を絡ませて互いの唇を貪る………









クチュ───………




舌の交わりで水音がして、更に激しいキスを繰り返す。



(何で俺…………とまらない………部長がこんな……可愛いと思うなんて……)



頭の芯がぼーっとしている中、佐助は己の行動を振り返る。



「ッ………!?」



佐助はふいに胸元を触れられて唇を離した。



「………ダメ………か……?」



熱に浮かされた上目遣いの誘いに反応しないわけがない。




「部長………ッ!!」

「んッ────」



佐助は強く政宗の肩を抱き、深く舌を差し込み、その先を求めた…………







………あぁ………



チョコより甘く

チョコより濃厚

チョコよりとろけるプレゼント。




誰も知らない土曜日の甘い甘いバレンタイン………

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あきゅろす。
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