Non Stop部屋
塩を撒け
「はい、せとうちデンタルクリニック」
「………あ?」
まだアルコールの残る頭であっても、
隣りで電話に出た第一声の違和感が耳に残った。
「おい、元就………今、なんつった?」
「せとうちデンタルクリニック」
「いや、ここは『せとうち歯科』だろうが」
「それがなんだと言うのだ」
「勝手に名前変えんなってことだ」
「それだけのことか?」
「だけって……テメェ、ここは」
「喧しい…………どこかへ消えろ」
「消えろって、だからここは」
「酒臭くて不愉快だ、今すぐ消えろ」
────………
「っつーわけ、どう思うよ?」
「どうっていうより、俺は何でお前がうちに来てんのか逆に聞きてぇよ」
カウンターで愚痴を溢す大男が不愉快で仕方なく、政宗は腕を組みながら溜息をついた。
「他んとこは10時オープンで邪魔んなるだろ?」
「うちだってな、11時オープンでもやることあって忙しいんだよ」
「はぁ〜……元就は何とかしねぇとな」
「聞けよ、酔っ払い」
元親にスルーされて政宗はイラッとした。
「酔っ払いって………朝まで一緒に飲んでたのはテメェだろうが」
「俺はもう残っちゃいねぇよ、さっさと帰れヒモ」
「ヒモって………あれは俺の病院だろうが」
「ほとんど仕事してねぇんだし、追い出されてんだし名前くらい好きにさせてやれよ」
「だから俺の病院!」
「だったら帰れよ 」
ネーミングセンスの欠片もない医院名だから丁度いい、と思っていたが口には出さなかった。
「あいつってよ、俺を何だと思ってんだろうな」
「酒臭いヒモじゃねぇのか?」
「だからヒモじゃねぇ!どっちかってぇと、パトロンだろ?」
「はいはい、結論出たならさっさと帰れよ」
政宗はもう相手にせず、厨房内で作業を始めた。
「冷てぇじゃねぇかよ?テメェが『まだ足りないからもっとちょうだい』って強請るからこうなんだろうがよ?」
「おま、言い方が誤解を招くだろうが」
「違わねぇだろ?付き合わされたこっちは腰立たねぇよ」
「てめッ!!」
からかってニヤリと笑う元親に政宗はカァっと血が上る。
「またですか………政宗様」
「ち、違う!こいつとは飲んでるだけだ!っつーか、小十郎!何さらっと『また』とか言ってんだよ」
食材を抱えて厨房に入ってきた小十郎は呆れ顔。
「程々にして下さいよ」
「何をだよ!」
「何って………それは…」
「だからこいつとは酒しか飲んでねぇ!」
「まだ何も言ってませんが」
「はははっ」
「笑ってねぇでさっさと失せろよ元凶ッ」
佐助に一途さをアピールするため、(一応)節操良くする政宗なのだ。
11.07.29
[*前へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!