Non Stop部屋
1分たりとも



















「もーとーなーりー」

「………午前の診療は終わったから消えろ」

「冷たいこと言うなって!まだ11時55分、あと5分あるから〜」



患者も捌けてようやく休憩に入ろうと思っていた医院に招かざる訪問者が現れた。




「ん?また元親先生いないのかぁ?」

「朝っぱらから酒臭いから追い出した」

「あの人ってほとんど毎晩飲み歩いてるよな」



昼間はなかなか会わない医院長の銀髪を思い浮べて慶次は苦笑いをした。



「無駄話をするだけなら貴様も追い出すぞ」

「そんな睨むなって〜、定期検診の予約よろしく」

「貴様、そんなことのためにやってきたと言うのか!」

「だってご近所じゃねーか」

「暇人め……」



元就は白衣を脱ぎながら、カウンターに肘をついてニコニコ笑う大男に溜め息をついた。



「やっぱり色男は歯が命だろう?」

「死ぬがいい」

「あはは冷たいこと言うなって」

「寝言を聞く暇はない、さっさと去れ」



相手にしきれず、元就は鍵を持ってドアへと歩いて行く。



「おーい、俺の予約」

「勝手にしろ………二日酔いの愚か者に相手をさせるから今は失せよ」

「これから何か用事でもあんのか?」



空気の読めない(読まない?)慶次だが、察するのは早かった。



「…………貴様には関係のないことだ」

「え!?もしかしてデート!?」

「関係ないと言っているだろう!」

「何々?ホントに?」

「何がだ!」



口を濁したこと、強く否定をしたことに慶次は目が輝いた。



「デートなんだろ?どんな子?これから食事はどこ行くの?なぁ?」

「だから、貴様には、」

「教えてくれないならいいよ、俺ついてくから♪」

「ッ…………!!」



元就が振り向くと、にこやかな笑顔なのに目の奥は笑っていない慶次が映った。



「どうする?」

「……………はぁ」



殴り飛ばして気絶させても良かったのだが、タチが悪く面倒臭い男だと分かっているため、諦めたように溜め息を零す。



「………Sixへ行くのだ」

「Six??え?今日は定休日だろ?」

「だからだ」

「え?え?」

「練習で作った菓子を我に試食させたいと言うから行ってやるのだ」

「練習って、え?佐助?」



すんなり白状する元就の素直さにも内容にも目が点になるばかりだ。



「分かったらさっさと失せろ」

「いや、ちょ、何で佐助が元就に頼むのか、あいつの上司は幸村なんだし」

「知らん!秘密で腕を上げたいという心意気なのだろう!頼りにされたならば無下にも断れぬ」

「は………ぁ」

「時間が惜しい!さっさと出よ!」

「わわっ!」



疑問符ばかりの慶次は足蹴にされて医院を追い出された。



「おいおい………元就が誰かのために動くことなんてあるのかよ………」



足早に去りゆく背中にただただ呆然と立ち尽くす。



「いいねいいねぇ!恋ってやつかぁ!?」




ぱぁっと明るい表情になる単細胞。








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