Non Stop部屋
水曜日の嘘

















「もしもし………」

『今仕事中か?』

「ううん………もう終わるとこ」

『早かったな………今日会うか?』

「うん………ッ!」





胸が躍る。

声が弾む。

顔が緩む。





『じゃあ後でな』

「うん…………」




ツー………ツー………




身体の奥底から沸き上がる歓喜。

あぁ………狂ってしまいそうだ………



両手でしっかりと身体を抱き抑え、ゾクゾクと高まる感情を落ち着かせた。












待ち合わせはいつも駅のロータリー。


貴方はどこから何でそこへ来るのか分からない。

けれど、いつも俺が車で向かうより先に立って待っている。





俺はミラーで最終確認。




駄目だ。


何て締まりのない顔だろう。




駅が近づくにつれて、鼓動が喧しいくらいに高まり、顔は自然に緩んでしまう。



こんなに、こんなに貴方に会えることが幸せであるなんて………




「あぁ…………」




いつもの場所で立つ貴方。

周囲が霞んで見えるくらいに貴方の立ち振る舞いは美しく、眩しい………




俺の車に気付くと軽く微笑む貴方。




「お待たせ」

「待ってねぇよ」




車に乗り込む時にフワッと漂う貴方の香りを肺一杯に吸い込んだ。

勿論気付かれないように。



「今日は早かったな」

「うん。今日は会える気がしてたから早く仕事片付けてたの」



嘘つき。

貴方を考え過ぎて仕事が手に付かないから切り上げたのに。




「昨日は連絡出来なかったし、今日会わねぇとお前泣くと思って時間作ったんだぜ?」

「ありがと………でも残念ながら俺は泣かないよ〜」



嘘つき………

昨日散々泣いたくせに。




「ンッ…………」




信号で車が停まったと同時に、頭を引き寄せられてキスをされた。


クールな人なのに、こういう所は情熱的だ………



俺も頬に手を添えて、絡んでくる舌に応えた。




「会いたかったぜ………Honey」

「俺も会いたかったよ………」



信号が青に変わる。

俺は美しい貴方から視線を外す。



「…………」




無言で握られた手………


空っぽになっていた俺の心が満たされていく。



貴方の右手は大好きだ………



指を組んでも、強く握っても邪魔な物は何もないから………




「ん?…………アッ!」




シートベルトを外し、座席から身体を離したので何かと思ったら、



「さっきのキスで勃っちまったのか?」



俺は股間を撫で上げられた。



「そりゃ………ちょっ!?」

「黙って運転に集中してな………」

「ん…………あぁ………」



貴方は俺のベルトを緩め、ファスナーを下ろして下着から硬くなった物を掴み出した。



「えぇ!?」



キス一つで興奮して恥ずかしい……と思っていたら、急に貴方は俺の股間に顔を寄せた。




「ぅ…………あ…………」

「ん…………」




運転中だというのに口でされて、俺の意識は下半身に飛んでいる。




「ちょ…………ホテルまで待てないの?」

「ん………待てねぇ………」




嘘つき………


自ら進んでこんなことしてくれるなんて、嬉しくて興奮して堪らないのに………




「なぁ………」

「ん〜?」



舌先で先端をグリグリされながら声を掛けられた。




「昨日とかオナニーしたか?」

「ん〜……………したよ」



貴方と奥さんのセックスがおかず。




「何でするんだよ?少しは溜めとけよな」

「えぇ〜!無理だよ………いつ会えるか分かんないんだもん」

「ちゃんと会ってるし、俺はしてねぇよ?」




会ってたとしても、それ以上に俺は我慢が出来ないんだ。


それに貴方は、1人でしなくても…………ねぇ?

そんな野暮なことは聞かないけど。




「ん〜………じゃあ次は溜めておくようにするよ」

「………俺ばっかがっついてるみてぇで嫌なんだよ…………」

「そんなことないでしょ〜?」





嘘つき………ッ!!



本当は今すぐ車を停めて、服を破いて、慣らさないままでいいから突っ込みたいのに!!

無我夢中で腰を振りたい!

貴方を鳴かして、美しい貴方を俺の精液で汚したい………ッ!!


俺のをしゃぶる貴方の顔に、俺の本心をぶちまけたい…………ッ!!




俺は貴方に飢えているんだ………


だけど、こんなどす黒い感情はぶつけられない………。

俺が本気で貴方を求めても、貴方はそれに応えてはくれない。



だから俺は嘘を吐く……………



俺は余裕な振りをして、

貴方のペースに合わせてる。


貴方のペースを乱さなければ、俺の居場所はそこにあるでしょ?





貴方が欲しくて堪らない本心と、

貴方を失う恐怖心。



精一杯の理性が作る嘘。






「なぁ…………我慢出来ねぇ………」




あぁ…………





欲に素直な貴方は、どうして俺の嘘をグラグラと不安なものへと変えていくのか…………







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