Non Stop部屋
火曜日の涙
シャァ…………────
頭からシャワーを浴び続けてどれくらい経っただろうか。
日付が変わるまで待っていたが、やはり今日は連絡がなかった…………
風呂場のドアは少し開けて、脱衣所のマットの上に転がる携帯。
いつ如何なる時でも携帯は傍に置いておく。
こちらからの連絡はタブー。
貴方からの貴重な一回を無駄にすることは出来ないから、いつでも傍に置いておく。
こんな時間に鳴ることはない携帯だが、もう習慣になっている。
今頃何をしているのか………
もうお風呂入ったかな?
もう寝てたりするかな?
もしかして、奥さんと………
ドクンッ────
心臓が躍った。
以前、聞いたことがある。
跡取りが必要なのだと…………
淫らな表情で、艶やかな喘ぎ声を上げる貴方が
誰かを抱いている?
豊かな乳房を揉んだり、
股に顔を埋めたり、
男の顔をして腰を打ち付けたり、
子宮に白濁の液を吐き出しているのだろうか………
女は、あの美しい裸体を抱き締めて腰を振っているのだろうか………
腹の中で渦巻く嫉妬。
吐き気がする……………
『俺の事、愛してる?奥さんとは別れないの?』
決死の覚悟で投げ掛けた質問。
…………─────
「愛してるぜ…………」
貴方は笑顔で答えてくれた。
けれど、その後に続く言葉は………
「別れたってお前と結婚出来るわけじゃねぇし、俺のこういう性癖隠すのに都合いいだろ?」
だった…………
「跡取りが必要なんだよな………それさえ出来たらもっとお前との時間作るからな」
……………─────
だから俺の存在は知られてはいけない。
円満な家庭を築いて、子供のために奥さんと身体を繋げる。
本当に…………?
疑いたくないけど、信じきれない………
だけど、信じて待つしかない。
1日も早く、子供を…………
子供を…………
………吐き気がする…………
いつも俺が抱いている貴方が女を抱く。
貴方が女を…………
誰かと身体を…………
「く………ぁ………」
嫉妬で気が狂いそうだというのに、俺は気付くと硬くなった自身を握り締めていた。
ドクンッ────
排水溝に白い塊が流れて行った………
「ハァ………ハァ………」
何て虚しいのだろう。
心が空になるような、虚脱感しか生まれなかった。
「ぅ………う………」
シャワーの水滴と涙が交じり合う。
子供を宿せる女が疎ましい。
自分は男だから貴方と身体を繋げることが出来るが、
女は貴方の人生を繋ぎ止める。
どうして俺は男なんだろう。
女だったら貴方の子を宿せた。
けれど、女だったら貴方に愛を囁かれることはなかったかもしれない。
あぁ…………
神様、
どうか俺から涙を奪って下さい。
シャァ…………────
シャワーが涙も嗚咽も消し流してくれた……………
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