Non Stop部屋
2
『運命の出会いって信じる?』
「…………は?」
元親は咥えていたタバコを落とす位に愕然とした。
「今………なんつった?」
「ん〜……………」
佐助は屋上のフェンスにもたれながら空を見上げていた。
「運命の出会いってあるのかな………」
「………………」
元親は自分の聞き間違いではなかったことに溜め息をつきながらタバコを拾った。
「テメェ…………頭沸いてんのか?」
いつも一緒にいる佐助の言動のおかしさに、ついつい苦虫を潰したような顔をしてしまった。
「やっぱり俺様変だよねぇ………」
「自覚してんなら相当重症だな………」
まだ佐助は空を見上げたままだった。
授業が終わり部活に向かう者、下校する者、教室に残る者………
下の方では騒がしい声が響いている。
そのざわめきが嫌で、二人は波が去るまで屋上で時間を潰すのが日課になっていた。
「今朝さ…………痴漢にあってる子を助けたんだよ」
「はぁ〜ん?マニアックなお前の好きそうなシチュエーションだな」
「それでさ………凄く綺麗で可愛い子でさ………」
(コイツ………本気でヤベェぞ)
元親は馬鹿にした言葉を吐いたのに、何も反論しない佐助に苦笑いしか出てこなかった。
「守ってあげたい……っていうか……何て言うか………ん〜………勃っちゃったんだよね」
「それじゃあ変態みてぇだな?」
「うん……変態かもしれない………男相手だしね」
「……─────ハァッ!!?」
元親は目の前にいる友人の告白に意識が飛びそうになった。
「テメェ………正気か……?」
「ん〜……こんな気持ち初めてだよ………」
佐助は体を反転させてフェンスに手を掛けた。
「もう一度会ってみたら何か分かるかもしれないんだけど………名前すら聞いてないんだよね……」
「お前がか?更におかしいな」
誰にでも気軽に話し掛け、相手の懐へ入り込むのが上手い佐助が何も聞き出していないことに、やはり違和感を感じた元親だった。
「もう一度会えたらホントに運命かもなぁ〜………」
佐助は校庭を見下ろし溜め息をついた。
「男に運命もクソもあるかよ」
「…………」
「たまたま痴漢にあってた野郎だからフィルター掛かって見えたんじゃねぇの?」
「…………」
「………おい佐助聞いて……」
「運命ってあるよ………」
一点を見つめたままの佐助が呟いた。
「校門のトコ……あの子だッ」
「はぁ〜?お前どんだけ視力がいいんだよ………って居ねぇし!」
ほんの一瞬視線を眼下に向けただけなのに、既に佐助の姿はなかった。
「………運命ねぇ〜………」
元親は吸い込んだ煙を吐き出し、空を見上げた。
『運命の出会いって信じる?』
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