Non Stop部屋
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『運命の出会いって信じる?』








そんなもんはドラマや漫画の世界で作られるしかないよ。




俺様は信じない。




良く言えば現実主義者。

悪く言えば冷めてる?







だけど出会いは求めちゃうんだよねぇ〜


女の子好きだもん♪





ま、きっかけはどこにでも………




ほら、そこにも─────








佐助は朝の満員電車に揺られている。



(気持ち悪いオッサンだな………)




キョロキョロと挙動不審な中年男が目に止まった。



(あぁ………そういうことねぇ〜)



男の近くにいる子が何かに怯えるように俯いていた。




痴漢………






(別にヒーローを気取るわけじゃないけど、黙って見過ごせないでしょ〜?)




佐助は電車の揺れで動く人垣の隙間を移動した。





(ビンゴ〜………)




鞄で隠しているが、尻を触る手が確認出来た。





(………女の子を苦しめる変態オヤジに制裁を〜)






ゴキッ





「ぎゃぁぁあ!!腕がぁ!?」




佐助は男の肩を外したのだ。



痴漢は丁度ホームに着いてドアが開いた車内から、悲鳴を上げながら降りていった。




「何アイツ………?」

「キモい〜………」




車内がまだざわついてる中、佐助は痴漢にあっていた女の後ろに立った。





(華奢〜♪髪の毛で顔見えないけど………可愛いといいな)




「ねぇ大丈夫?」

「ッ!!」



そっと後ろから囁くと、肩をビクッとさせた。




「怖くてもちゃんと助け呼ばなきゃダメだよ……あぁいうのはツケ上がるんだから」

「………」




(おっ………色白で綺麗な顔してるじゃない)




恐る恐る上げられてこっちに向けた顔が整っていることに佐助は内心でガッツポーズをした。





「……………呼べるわけねぇだろ………」

「────えっ!?」





痴漢にあい、怯えて可哀想な美人女子高生………






………のはずが、発せられた声はトーンが低くて掠れていた。




「あ………れ?………男……の子……?」

「…………」

「あぁ〜………だから助けを呼べなかったのか」




男が痴漢にあっていて助けを呼ぶことは恥ずかしい。



「………お前が………?」

「うん………痴漢にあってるのが分かったから………ってか顔色悪いけど平気?」

「気色悪くて………」

「大丈夫………っと」



大きな揺れでよろけた男を佐助は支えた。




「悪い………」

「いいよ………俺に寄り掛かってて平気だから」

「少しだけ借りる………」
「うん………」





男は本当に辛いのか、佐助に体を預けていた。




(男同士で抱き合うような形になってるけど………満員電車だから仕方ないよね?)




佐助は周囲に目を配ってから、自分の肩口に頭を乗せる男を観察した。




(青い顔して………野郎に触られたら気持ち悪いもんなぁ〜………あのオジサンはゲイだったのか………それとも………)






女にしては少し背が高いかもしれないが、男にしておくことがもったいない位の美しさがあった。





(………うっかり腰に腕回しちゃったけど………細いなぁ〜………うなじが可愛いし………)





こっそりと髪に鼻を近付けた。




(ん〜………ヤバイかも………)





仄かに香るシャンプーの匂いや、密着させている体から感じる体温や感触………


腕の中にいるのは男だと分かっているのに、理性に反して本能が反応してしまった。








(ははは〜……勃っちゃったよ…………)





佐助はそっと腰を引いた。







「ぁ………」

「え!?何?」




男が急に顔を上げたので、佐助は声が裏返ってしまった。




「ここで………」

「あ、駅ここ?」




佐助は車内アナウンスが耳に入らない程意識を取られていたのだ。




「大丈夫?」

「あぁ………」




佐助は男を支えながら一緒にホームへ降りた。




「平気?少し座って休んだ方が……」

「………それ………」

「えっ!!いや、これはっ!」




男は佐助のズボンを見ていた。




(やべ………バレた………?)




佐助はまだ少し腰が引けていたので、指摘されたら言い訳は出来ない。







「それ………R高の制服だろ?」

「えっ!あ、うん」

「まだ先だろ?行けよ」

「いや、でも」

「もう大丈夫だ……」

「う……ん………気を付けてね……」







佐助は男に胸を押されたのでそれ以上は深追い出来ず、後ろ髪引かれる思いだったが電車に乗った。




(まだ顔色悪いじゃん………)




ドアが閉まり、声も届かない。



ただ二人の距離だけが開いていった。






「あぁ〜…………」





(名前すら聞いてないや………)




佐助はドアにもたれながら流れる景色をボーッと眺めていた。










『運命の出会いって信じる?』



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あきゅろす。
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