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雨一つ(佐+政)


















ザァァァ…………─────






突然の通り雨


準備よく手持ちの傘を差す者、駆け抜ける者、店や地下鉄に逃げ込む者、
街は一気に騒がしくなり、

そして道には人影が減った。






「クソッ!」




シャッターの閉まっている店の軒先に逃げ込んだ。



「ここまで濡れたなら、電車乗らずに歩いて帰るかなぁ………」



雨に濡れて雫が落ちる前髪の間から、まだ止みそうもない黒い雲を見上げて溜め息をつく。




バシャバシャバシャ




「ひゃー!!」



1人の男がカバンを頭に乗せ、叫びながら軒下へと走り込んで来た。



「うわぁー、びしょ濡れだよー!」

「……………」



隣りで騒いでいる男に無関心を装って、そのまま空を見上げていた。



「………止むかなぁ………」

「……………」

「突然降り出すのって反則だよねー」

「…………はぁ………」



独り言だと思って無視をしていたが、2人しかいない空間のため、仕方なく相槌を打った。



「ねぇ」

「……………はい?」

「…………ワイシャツって濡れるといやらしいよね」

「は?」

「透け乳首」

「ッ!!」



思わずガバッと胸元を隠してしまった。


だが、


よくよく考えると濃い色のTシャツを中に着ているので透けるわけがなかった。



「…………」

「あはは………怒った?」



ムッとしながら少し背の高い隣りを見上げると、
同じようにずぶ濡れ姿で笑ってこちらを見ていた。



「そっちこそ………ワイシャツ」

「残念〜♪俺は見せ乳首」

「────………ククッ、何だそれ?Tシャツの柄か?」



濡れたシャツは、胸元に★の模様が透けて見えていた。



「意図的?」

「あんまり見ないでよー、エッチ〜」



通り雨に滅入っていた気持ちは、笑いとともに吹き飛んだ。



「はは、は………っくしゅ!」

「あら〜………まぁ、乳首は透けなくても濡れたままは寒いよねぇ………」



カバンの中をガサガサと探る。



「確かタオルとかハンカチとかあったような………」

「いいよ、別に」

「いやいや、確かあったはず………あ、」



手が止まる。





「折り畳みの傘見つけた」

「ばっかじゃね」



今更な発見にまた2人で笑った。



「家どこ?近い?」

「3駅向こう」

「電車かぁ…………」



上から下まで眺めても、水の滴る姿は電車に乗るには迷惑そうだ。



「少し歩くけど、家来る?」

「え」

「ここで居合わせたのも何かの縁でしょ?服乾かそうよ」

「いや………」



バサ────ッ



「ほら、行くよ?」



断ることなど出来ないような温かい笑顔で、広げた傘へ招き入れられる。



「…………ん………」



こくりと頷くと、
雫がぽたりと前髪から落ちた。













×××××××××××××××

名前は無くとも、佐助と政宗。

突然の災難に、見知らぬ助け。
笑って乗り切る人の温もり。

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