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二十歳の約束(佐+政)


















周りを見やれば、

女子は鮮やかな晴れ着。
似たような振り袖
似たようなメイクに髪型。
区別をつけろという方が難しいくらいだ。


スーツの男子の方がまだ個性が出ていて、
ホスト系、おっさん系、チンピラ系……

紋付き袴姿もいるが、金髪で頭の悪そうな連中に呆れて目を逸らしたくなる。



「帰ろっかな………」



きっちりスーツを着こなしているが、派手なオレンジ頭のためかどこか違和感のある佐助は、
成人式会場周辺の騒がしさに嫌気がさしていた。




「佐助?」






何度目だろうか。

誰なのか、いつのクラスメートなのか、
記憶にない連中にばかり名を呼ばれて適当に合わせて愛想笑いをして受け流していたが、






この声は………







「伊達ちゃん!!」





高校を卒業して2年経っても忘れる事のない声の主。



「よぉ、相変わらず覇気のねぇツラしてんな」

「伊達ちゃんこそ相も変わらず口が悪いね」



2人は苦笑いで久し振りの再会を喜んだ。



「伊達ちゃんって紋付き袴っぽいイメージだったけどスーツなんだねぇ」

「気が変わった時に面倒だから辞めたんだよ」

「変わる?」

「式なんて抜け出してどこか行きたくなっても着替えなきゃなんねぇだろ?」

「まぁ確かに」

「例えば………お前とこのまま………な?」

「えっ」



高校時代と変わらない、
人を試すようなイタズラじみた笑み。



「ククッ………昔っから変わんねぇ反応だな」

「からかうのはダメだってばぁ…………」



動揺が顔に出てしまったので、佐助は咳払いを1つして落ち着きを取り戻そうとした。



「なぁ………お前彼女出来たか?」

「んー………いないよ」

「いつから?」

「伊達ちゃんが知ってる頃から」

「そうか…………」



政宗は少し遠くを見るように視線を外した。





目指す道が違うから………


お互いが納得して出した答え。

別々の進路を選び、別れを告げた。




「彼氏はいんのか?」

「ちょ、……俺真性のゲイじゃないからいるわけないじゃん!」

「………ふぅん」

「何か………面倒臭いっていうか………」



もうあの時のような燃え上がる感情が湧かず億劫になっているのは確かだが、


色褪せない思い出を大事にしてしまっているのが1番の原因だった………




「伊達ちゃんは?」

「俺?あー………彼氏がいる」

「は?………─────ッ!?」



一瞬、何を言われたのか理解出来ずに頭が真っ白になった。



「ちょ、うっそ!マジで!?」



佐助は一気に体温が上がるのを感じた。

嫌いで別れたわけではないので、未練がないとは言い切れず、元恋人の告白は心を傷つけた。



「彼氏なんだ………」



佐助はあまりのショックでその場に踞ってしまった。


「えー………嘘だろぉ…………」

「あぁ、嘘だぜ」

「はぃぃッ!?」



一気に脱力していた身体が緊張で強張る位に驚き、顔を上げると、

にやりと不敵な笑みを浮かべる政宗が自分を見下ろしていた。



「ククッ………お前、まだ俺のこと忘れらんねぇんだな」

「あぁー………はい、うん……その通りですよ、伊達ちゃんが好きだよ、久々に会ったら一段とかっこ良くなっててもっと好きになったよ」



適わないと白旗を上げた途端、封印していた『愛しい』という感情が一気に湧き上がる。



「まだ先だけどよ………」

「んー?」

「就職はこっちでするつもりだからお前も帰ってこいよ」

「えッ………それって…………うん!戻る戻る!」



言葉には出さない政宗だが、
『ヨリを戻そう』という意味が込められていることに佐助は気付いた。



「わぁー………卒業まで後2年………長いなぁ」

「今日までも2年だぜ?早いもんだろ」

「楽しみは待ちきれないよ!ねぇ伊達ちゃん」

「ん?」



遠回しな表現を理解して佐助が浮かれていることに、政宗は気恥ずかしくて後悔をした。



「就職決まったら結婚しよっか?」

「はぁ!?」

「もしくは、今からセックスしよう?」

「ばっかじゃねぇの」

「いやいや、俺本気だってば!2年分愛したいし、気絶するくらいイカしたい」

「お前の頭ン中は成長しねぇな」

「昔から伊達ちゃんのことしか考えられないよ」

「ばーか」






再会の悦び

再出発の期待


成人の日に、再び重なり合った新たな道を2人は歩み始めた…………










×××××××××××××××

成人になる皆さんに贈ります。
おめでとうの気持ちを甘い2人に込めて(笑)

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