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元日の風景(幸+佐)

















「ふぁ………」



こたつに入りながらテレビ画面を眺めているが、
何度もあくびをしてボーッとしているので内容までは観ていないだろう。



「旦那〜、眠いなら無理してないで寝ておいでよ」



今時の高校生にしては珍しい早寝早起きを心掛ける幸村は、
普段ならば21時には寝てしまうのに、昨夜は年越しということで夜更かしをしたため、本日は寝不足だった。



「いや、男子たるもの日の高いうちから布団に入るなど言語道断!鍛練の足りない証拠だ!」

「あー、はいはい………」



元日から熱く力説されたくなく、佐助は居間を出て行った。



「ねぇ旦那〜ミカン食べる?あと、年賀状届いてたから分けてくれる?ほとんど大将のだと思うけど」

「あぁ………」



暫くしてから佐助はミカンの入った籠と年賀状の束を持って現れた。



「むぅ………」



目をしょぼしょぼさせながら一枚一枚仕分ける姿に、佐助はついつい笑ってしまう。



「チャンネル変えてもいい?」



うとうとしている幸村の前に置かれたリモコンに手を伸ばした。



「観てる」

「あ、そう」



簡単にチャンネル争いから引き下がった佐助は、ミカンの皮を剥きながら苦しそうな表情で走るランナーの画面を眺めた。



「なんだと!?」

「え!?」



駅伝なんて途中は代わり映えしないんだから結果だけでいいじゃん、
そんな冷ややかな感想を抱いた直後だったので、佐助は口元を手で覆った。



「佐助………これは真であるか………!」

「俺様声に出してた?いやいや、本心じゃないからさぁ」

「こ………これは………」



わなわなと奮える幸村。
フォローしようとする佐助。



「こ、この麗しい達筆な年賀状は政宗殿………ッ!!」

「え、あ、そう、良かったね」

「ぬぉお!政宗殿が俺の名を書いて下さったとは至極幸せ!!」



年賀状を高々と掲げ、幸村は喜んでいた。



「俺と連名?」

「いや、俺宛てだぞ」

「じゃあ俺宛てにある?」

「どうだろうか?」



はしゃぐ幸村を見て、佐助は少し不愉快な気持ちになり、仕分け途中の束の中から自分宛てを探した。



「ない…………」

「うぉぉ………政宗殿ぉぉ」



政宗からの年賀状が見当たらず、愕然とした。



「ちょっと旦那、伊達ちゃんは何て書いてるのさ?」

「教えぬ!」

「はぁ?何隠そうとしてんの!」

「これは政宗殿が俺に下さったんだ!」

「ちょ、ケチー!」



幸村は大事そうに抱きかかえて自室へと向かった。



「嘘だろぉ…………」



ショックのあまり、佐助はこたつに顔を伏せてしまった。



「旦那だけなんて………ん?メール………───ッ!?」



尻ポケの携帯が震え、取り出してみると送信者は
『伊達政宗』



「俺にはメールだったのかぁ」



嬉しいような物足りないような複雑な想いでメールを開くと、
身体の底から奮えるような内容が…………



『駄犬を巻いて来れるなら2人で初詣に行こうぜ』



とあった。


佐助はすぐに立ち上がり、上着とマフラーを掴み幸村の部屋の前へ。



「旦那!俺少し出掛けるからいい子にしててね!」

「んー」



心ここに在らずといった返事が帰ってきたのでホッとして玄関へ向かう。



「旦那は書面の伊達ちゃんだけど、俺は生の伊達ちゃんに会ってくるよ♪」



呼び出しがかかった喜びや、独占出来る優越感で顔が緩んでしまう。




『今すぐ会いに行くよ』



逸る気持ちを抑え切れずに返信メールを打ちながら家を飛び出した。




「新年最高!」














×××××××××××××××

新年一発目のひっそりラブラブな佐政。
初詣でのお願い事は
『いつまでも一緒にいられますよーに』
かな?

今年も我が家の佐政をよろしくお願いします。

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あきゅろす。
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