白煙と伝言 9


















「佐助入るぞ──────ゲホッ………」



佐助が仕事場として使う部屋のドアを開けると、そこは白煙漂う空間になっていて、思わず幸村は咳き込んでしまった。



「あれ?………旦那、何?」

「何、というかお前………」



佐助はデスクに向かい、書類を凝視しながら煙草を咥えていた。



「少しは換気でもしたらどうだ」

「あぁー………外の音聞きたくないから開けないで」

「…………」



窓に近付こうとした幸村は行動を制され、代わりにデスクへと視線を落とした。



「吸い過ぎだろう………」



灰皿には明らかに1箱分以上ある吸い殻の山で、幸村は溜め息を零した。



「集中してるからねー」

「お前は慶次がいないと自己管理も出来ぬか………」

「……………」



幸村が呟いた意味の含まれた一言に佐助は書類から目を離した。




「慶次は補佐なだけで俺の世話なんてさせてないよ」

「そうか?」



佐助が否定をしたことで空気が張り詰める。



腹を探り合うような遠回しな表現。



2人の裏には『政宗』を巡る闘いの火花が散っているが、どちらとも表には出さない。





「それで、旦那何の用?」

「あぁ………政宗殿と連絡が取りたいのだが」

「どうかした?今持たせてある携帯は俺のプライベート用のだから、伝言受けるよ」

「本当にお前は公私を分けるな………」

「家族同様と言えど一線は必要だからね」

「政宗殿の自宅も教えぬのだろう?」

「まぁね………俺は言わないよ………」



佐助は自身のマンションですら幸村には教えない程に区分を徹底していたのだ。



「………では………こちらに来て荷解きなどやることは多いだろうから2日程は好きにして下さいとお伝えしてくれ」

「分かった」

「勿論、顔を出してもらっても構わないと………」

「はいはいっと…………じゃあ俺は銭勘定の続きしたいから」

「いつも悪いな」

「大したことじゃないよ」



そう言って佐助は新しい煙草を咥える。



「ゲホッ…………頼んだぞ」



長居は無用と判断した幸村は煙にむせながら部屋を後にした。




「………俺も大人気ないな」



佐助は火を点けたばかりの煙草を灰皿の隙間で揉み消した。



そう………


煙草が苦手な幸村を近付けない・追い払う手段として敢えて数多く吸っていたのだ。



「喉痛ぇ…………」



佐助は自業自得の行動に苦笑いしながら携帯を取出し、発信履歴の名前を見つめた。



『慶次』『政宗』



本来なら悩むことなく選べることも、今回は躊躇してしまった。


まだ一緒にいるとしたら、どちらに掛けても嫉妬心を煽ることになるから………



「…………こっちか………」




佐助が選んだ名前は『慶次』



政宗の誤解を今すぐにでも解きたいところなのだが、きっと今は話せる感じではないだろうと予想。


そして、


慶次が間違ったことを起こしていないか………という不安が過ったから。




佐助は発信ボタンを押して携帯を耳元に当てた。


コール音が響く…………




「丁度着いた頃か……………?」




いつもなら5回以内のコールで出る慶次が電話を取らないことに手が離せないのか、と安易な想像。


佐助は電話の向こうで何が起こっているかなど知る由もなく、ただコール音が途切れることを待った──────













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