太陽と月の距離
予感











カラン───







「いらっしゃい……あ、旦那お疲れ」

「うむ………」

「ほら、突っ立ってないでこっちおいでよ」







幸村は一件の居酒屋に立ち寄った。










幸村をカウンターへ座らせた店主の名は猿飛佐助。




幸村の同居人であり、世話係である。




「すぐ作るから待っててね〜」






夜の商売のため家を開けてしまうので、夕飯は幸村が店まで食べに来ることになっている。









「幸村さんが神妙な顔してるなんて珍しいですね」

「うむ………」




店員の霧隠才蔵でも気付く違和感なのだから、何でも知り尽くしている同居人の佐助も不安に思った。







「………新宿初勤務で何かやらかしたの?」

「いや……」

「………何?」





佐助は幸村に気を配りながら手際よく、幸村の夕飯とお客の注文を捌いていた。





「胸が………苦しい」

「えぇ!?」




佐助は手を止めて幸村を凝視した。




「何?犯人の取り抑えで暴れられたの??」

「いや……歌舞伎町で人を見かけて……」

「それで……?」




本当に苦しそうにしている幸村を見て、佐助はトーンダウンさせた。





「とても華奢な方が男達に絡まれておって、助けねばと思った瞬間には……薙ぎ倒す早業……」

「うん……」

「目に焼き付いたその光景を思い出すと胸が……」




幸村はギュッと自身の胸ぐらを掴んだ。








(やっべ…………)





絞り出された言葉を読み取り目を逸らした。







(学生時代も恋愛事には無頓着だったのに……よりによって歌舞伎町で見つけた腕っぷしの強い女に一目惚れかよぉ〜!)






「佐助!聞いておるのか?」

「あ、うんうん……きっと喧嘩を止められなかったから旦那の正義心が痛んでる証拠だよ」

「そうなのか?」

「そうそう!だから明日からも頑張れるようにいっぱい食べなよ」

「うむ!いただくぞ」





幸村は絶対の信頼を置いている佐助の一言に納得をして、前に並べられた食事に手をつけた。






「佐助………幸村さんのあれは違うだろ」

「言うなよ……俺は面倒事はごめんなんだ」

「………はいはい」





佐助と才蔵は小声でやり取りをした。











幸村は恋に落ちたのか───?



















×××××××××××××××

オマケ




「佐助!おかわりだ!」

「あんたどれだけ食べる気!?」

「佐助のおかげでスッキリしたから飯が美味いぞ!」





佐助は何度もご飯茶碗を差し出す幸村に項垂れた。





「幸村さん………お前の取り越し苦労じゃね?」

「俺もそんな気がしてきたよ………」








つづく

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