太陽と月の距離
狼狽













カラン────





「あ、幸村さん」

「む?……佐助は?」

「えぇ〜っと………」



才蔵は幸村の問い掛けに厨房の中へ視線を移すと、




「はぁ〜………」



そこには、どんよりと沈みながらじゃがいもの皮剥きをしている佐助がいた。




「何だ?腹でも痛むのか」

「いや………あれは………」


さすがに『あなたがプリンを食べないほど落ち込んでいる事にショックを受けている』とは言えなかった。



「どうした?才蔵が言葉に詰まるなど珍しいな」


「えっ」

「何か困っておるならちゃんと言えよ」



(あれ?幸村さんがまともだ……)



幸村の笑みに才蔵はピンときた。




「幸村さん………連絡とれたんですか?」

「ッ………うむ………」



幸村はほんのり頬を赤く染めて頷いた。




「何!?旦那!ホント!?で、何だって?」



カウンターへ身を乗り出すように勢い良く佐助が食い付いてきた。



「何って………少しだけお時間いただけてお会いして………」

「そっか………良かった〜」

「良くないのだ!!」

「えぇっ!?」



顔を赤くしている幸村を見て安堵した佐助だったが、再び身を乗り出した。



「ま……政宗殿に合わせる顔がないのだ……」

「何……どうしたの旦那?」

「……その………政宗殿を考えて………その……」



幸村は俯きボソボソと言葉を濁していた。



「どうしたのさ旦那!?」

「その………自慰を………」

「は……あぁ!?何!?もう1回!!」

「だから1回ではなく3回も政宗殿を考えて自慰をしてしまったから合わせる顔がないのだ!!」

「はいぃぃ!!?」



幸村は佐助に急き立てられて、恥ずかしさのあまり勘違いしながら真実を叫んでしまった。



「ちょ、ちょっと待って!旦那落ち着いてプリン食べよう!」

「お前も落ち着けよ」



ワタワタとパニックな2人に冷静なツッコミを入れる才蔵。



「え……何………何で旦那が自慰なんて行為を知ってるの………?」

「そ……某だって男だ……ッ」

「ちょ………どこで憶えたのさ!?」

「昔……才蔵から……」

「────ッ!!」



幸村の口から紡がれた名前に、佐助は才蔵の胸倉を掴み上げた。



「お前………旦那に何教えて……」

「男ならするだろ………テメェだって」



佐助は自分の知らない幸村があったことにショックと怒りを感じていた。



「止さぬか!佐助!お主が教えてくれぬから某が才蔵に頼んだのだ!」

「…………」

「某だって男なのだ………それ位はする………しかし………」



幸村の真剣な眼差しに佐助の手は緩んだ。



「しかし、政宗殿を汚してしまった己の煩悩が恥ずかしくて合わす顔がないのだ!!」



泣き叫ぶように幸村は顔を手で覆った。



「旦那、落ち着いて!アイスクリーム食べよう!ね!?」

「だからお前も落ち着けって………」



しばらく動揺したままおかしな言動を続ける2人に溜め息をつく才蔵だった。














×××××××××××××××

オマケ

「旦那が………オナニーしてたなんて…………」



幸村が帰ってからの佐助は、来る前と同じようにどんよりと落ち込んでいた。



「お前………幸村さんを過保護にしすぎなんだよ」

「……………っていうかさ、お前は何教えてんだよ!」

「お前が、母親みたいに息子の性から目を背けてるから幸村さん苦しんでたんだよ!」

「ッ………」

「ったく……幸村さんがいくら純粋だからっていっても男なんだよ」



佐助は現実を受け入れたようで大人しくなった。

それを見て才蔵は、ようやく落ち着けると思い安堵の溜め息をついた。




「…………やって………」

「あ?」

「どうやって旦那に教えたんだよ!?」

「は……ぁ!?」



いきなり胸倉を掴み上げられて、才蔵は一瞬反応が遅れた。



「旦那のちんこ見た!?触った!?お前が手コキで実際に!?教えたのはオナニーだけ!?」



間髪入れずに母親の域を越えた質問攻めの佐助の顔に……



「い………いい加減にしろよこの変態がぁ!!」

「ぎゃぁ………!!」



ブチギレた才蔵の鉄拳が見事にヒットしたのだった………

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あきゅろす。
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