太陽と月の距離
暴走
政宗殿
貴方に………
貴方に会いたかった……
政宗殿ッ………
貴方への想いは募るばかり……
某は、貴方が
愛しい─────
幸村は全力疾走で公園へ向かった。
「ハァ、ハァ………──ッ!」
幸村は意中の人物を視界に捉えた。
ただ立っているだけなのに、周りの空気がピンと張り詰めるような不思議なオーラが醸し出されていた。
「……ぁ…………」
政宗も幸村に気付き、お互いが歩を進めて距離を縮めた。
「……急に悪かったな……」
「いえ………」
政宗は幸村の足下に視線を落としたまま話を続けた。
「……仕事が忙しくてな……まぁ……まだ落ち着いちゃいないがな」
「はい………」
(少しお痩せになられたか………?)
政宗の苦労を知ることが出来なかった自分に胸が痛んだ。
「その関係でこれから……実家へ……行くんだ………」
「ご実家へ………」
幸村は政宗に聞いた話を思い出した。
実の母との苦い記憶………
「もう昔にこだわっちゃいねぇのに………足が重くなってな………そしたらよ………お前に………」
ほんの僅かな沈黙。
「…………お前に………会いたくなった」
「ま………政宗殿ッ!」
思わぬ告白に幸村は、胸が締め付けられる思いで、表情の見えない政宗の両肩を掴んだ。
「ッ………」
「政宗殿………そんなこと言われては…………どうか某に顔を見せて下され………」
「い………嫌だッ」
政宗は更に俯き、手で前を覆った。
「こんな情けねぇツラ見せられっかよ!」
「顔を上げて下され………」
「嫌だ………」
「政宗殿………」
幸村は柔らかいトーンで名を呼んだ。
「こんな……ガキみてぇに弱音吐いて……」
「そんなことはござらん……とても人間らしく、某は嬉しいです」
「………お前は………バカだな」
「─────」
赤面させて困った表情をした政宗は、幸村より少し低い視線を上げた。
「あ…………政宗殿ッ………」
政宗の上目遣いで照れた姿を直視した幸村は、込み上がる感情を抑えられずに………
「!?」
「政宗殿ッ!すみませぬ!しかし………某は政宗殿にお会いしたくて………」
幸村は政宗を強く抱き締めてしまったのだ。
「某は………気が触れてしまうのではないかと思えるくらい政宗殿を………」
抱き締めた腕の力を更に強め、
「愛しております………ッ!!」
想いを告げた幸村は自分の顔が熱くなるのを感じた。
「す……すみませぬ………某………」
「…………」
幸村は頭より先に感情で動いてしまう自分を恥じながら、腕の中から政宗を解放した。
「………んんっ!?」
唐突な政宗の行動に幸村は頭が真っ白になった。
政宗は幸村の頭を掴み寄せて、濃厚なキスをしたのだ。
「ん…………ぷはぁっ!」
「…………やっぱりお前に会えて良かったよ……」
「ハァ………ハァ………」
「笑っちまうくらい気が楽になったぜ」
幸村が酸欠とパニックで口をパクパクしている中、政宗は身を翻した。
「………俺もお前が………」
ニィッと笑みを残し、政宗は手を振り立ち去って行った………
×××××××××××××××
オマケ
「真田がフラれて戻ってこない方に千円」
「ラブラブで戻ってこない方に千円」
「うぅ………どっちにしても戻ってくる方に千円……」
誰も幸村が戻って来ると思っていない中、仕事を押し付けられて泣きそうな慶次だけが希望を賭けていた。
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