太陽と月の距離
愛しさ











『しばらく連絡出来ねぇから』





政宗がそんな言葉を告げる電話があったのは、既に2週間前のことだった。







(あなたをお守りすると誓った日から会えなくなった………

弱音を吐かぬようなお強い方だから、某にあんな一面を見せたことを気にされてるのだろうか………



会えなくてお声が聞けない………
この辛い日々はいつまで続くのだろうか……)







「旦那〜、ほら元気出して!」



いつものように佐助の店で夕飯を食べていたが、幸村は食欲もなく日に日に落ち込んでいくばかりだった。



「佐助………某は政宗殿に嫌われてしまったのだろうか……」

「だ………大丈夫だからね、ほらデザートのプリンだよ♪」

「………いい………」

「ッ!!?」



元気付けようと出した好物の甘味にも目をくれなかったことに、佐助と才蔵は絶句した。




「待て佐助!気持ちは分かるが早まるなッ」




乱心する佐助に止める才蔵………

もちろん幸村にはその騒ぎは視界にも入っていなかった。










「………おい、前田」

「何すか?」

「あれを何とかしろ!職場の士気が下がる悪だ!」

「あはは………あれね………」




浅井と慶次が目にしたものは……



「ましゃむねどのぉぉ………」



いつもなら暑苦しいくらいに喧しい幸村がデスクに倒れ込んでいた。




「恋人から連絡が来ないんだってさ………」

「……そんなもの、こちらからすれば良いだろう」

「連絡出来ないって言われたから、してもいいのか不安で、もう来ないかもって怖くて仕方ないんだよ」

「………面倒な男だな」

「真っ直ぐな証拠だよ」




慶次は悩み苦しんでいる幸村に掛ける言葉もなく辛かった。








ヴヴヴ………




「あっ………!!」




デスクに置いた携帯が光り、振動した。



「ぁ………」




もちろんディスプレイには『伊達政宗』の表示。


幸村は泣きそうになりながら携帯を握りしめた。




「………真田!少し早いが休憩に入れっ」

「は、はいッ!!」




上司の言葉に幸村は席を立った。





「も……もしもし!?」

『幸村……………』

「は……い……」



幸村は心臓がバクバク鳴り、初めて電話を掛けた時のように緊張で体が固まった。




『仕事中に悪い………』

「いえ……今休憩中です」

『………少しだけでいい……出てこれないか?』

「え………」

『会って直接話したいことがあるんだ………』




声のトーンが低くて、明らかに様子のおかしい政宗に、幸村は不安が高まり背中がチリチリとした。




「ど……こへ行けば……?」

『署の近くの公園にいる………』

「すぐ行きます………!!」




幸村は電話の途中から走り出した。




(……これでもう会えないと言われてもいい………貴方にもう一度お会い出来るのならばッ!!)






「政宗殿……ッ!」




幸村は込み上がる愛しい想いと、泣きたい衝動に襲われながら走り続けた………









×××××××××××××××

オマケ



幸村が出ていった課内はざわついていた。



「………長政?」



堅物部長の思わぬ温情に慶次は戸惑った。



「部長と呼ばぬか!」

「あぁ……すんません……」

「…………あいつの携帯は恋人からしか掛かってこないのだろう」

「ッ────」

「待ちわびていた電話なんだ………これ以上仕事の能率を落とされては敵わんからな」

「さすが愛妻家!話が分かるねぇ〜」

「そ、そんなことは関係ないだろ!!真田の分は貴様が休みなしでカバーしろ!」

「んなっ!?」




浅井は赤くなりながら部長の権限を発揮した。

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