太陽と月の距離
家族
旦那が彼女を連れて来ると覚悟してた……
けど現れたのは男。
ん〜……どこかホッとしちゃったけど……
旦那のあんな顔………
惚れてるのは決定かもなぁ〜
頭痛い………
「………幸村さん楽しそうだな」
「う……ん」
佐助と才蔵はコソッと耳打ちしていた。
(けど、それよりも………)
佐助が目を向けたのは、幸せそうに笑う幸村ではなく、穏やかに笑う政宗だった。
(隙がなくてこっちが身構えちゃうようなオーラがあるのに………旦那にはあんな顔するんだなぁ〜……)
佐助は他の客に気を配りながら二人の観察をしていた。
「旨かった………また来たい味だな」
「ありがと〜」
「佐助の店ならいつでもどうぞ!」
「そうだな」
政宗の笑みで佐助はホッと胸を撫で下ろした。
「じゃあ……」
「あっ」
「いいよ……お前はゆっくりしとけ」
「いえ、某も行きます」
政宗が立ち上がると幸村も立ち上がった。
「またおいでね〜」
政宗は軽く会釈をして幸村と一緒に出て行った。
────
「今日はありがとな」
「いえ、少しでも喜んで頂けたなら幸いです」
二人は肩を並べて歩いていた。
「ククッ……楽しかったぜ………お前のオムライス話も聞けたしな」
「あ、あれは忘れて下され!」
幸村は笑われてまた赤くなってしまった。
「……良い仲間だな」
「そうですね……もう家族のようなものです」
「家族………実際はどうだ?」
「両親と兄がおりますが、実家は長野なので滅多に会いませぬ……」
「そうか……」
政宗は少し伏せ目がちに言葉を続けた。
「お前は……兄をどう思ってる?」
「兄は尊敬しておりますよ!母からもお前は落ち着きがないから兄を見習えとよく注意されましたし……」
幸村はまた笑われると思いながら恥ずかしそうに胸中を述べたが、政宗の反応がなくて顔から笑みが消えた。
「………政宗殿もご兄弟がおありで?」
「………」
明らかに暗い表情をした政宗に幸村は問い掛けた。
「………弟がな………」
重い口を開いた政宗の次の言葉を、幸村は焦らず待った。
「………うちの兄弟は…………ってよりお袋に…………」
政宗は目を閉じた。
「俺は死ねばいいと言われる位、疎まれてる………」
「えッ───」
政宗の告白は幸村の思考を止めた。
「いや、………何でもねぇ……忘れろ」
「政宗殿!」
幸村には政宗が泣き出しそうに見え、頭で考えるより先に体が動いた。
「ッ!?」
まさか抱き締められると思わなかったので政宗は目を見開いたが、抵抗するわけでもなかった。
「政宗殿…………」
「ゆ……き………」
政宗は幸村の暖かく力強い腕の中で瞳を閉じた。
「………幸村」
「……────ッ!!」
幸村は血の気が引き、一気に政宗から体を離した。
「す……すみませぬっ!!……某……こんな……」
「………いい……」
「すみませぬ!突然、あのっ」
「Stop……」
幸村は政宗の機嫌を損ねてしまったことに焦ったが、
「ま……さ…むねど……の?」
政宗は幸村の袖を掴みながら、肩に頭を乗せた。
「………幸村」
「ぁ………」
突然のことで幸村は身動きが取れなかった。
「………」
ほんの僅かな時間かもしれないし、
もしかしたら長い時間身を寄り添わせていたかもしれない。
「………また連絡する……」
「は……い……」
政宗が語らないのなら今はその時期でないと、幸村は何も問わない。
そして……
俯き加減で表情は分からないまま政宗は幸村から離れて行き、幸村もその背中を見送らずに歩き出した………
×××××××××××××××
オマケ
「はぁ〜……口に合ったみたいで良かったよ〜」
政宗と幸村が店を出て行った後、佐助は肩の力が抜けた。
(お前はオカンっていうより……姑に怯える新妻かよ)
才蔵は安堵した佐助にツッコミを入れた。
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