太陽と月の距離
訪れ









カラン────




「あ、幸村さん………こんばんは〜……佐助!」

「ぁ……うん……だ……旦那……お帰り……」



佐助は扉が開く度にドキドキしていたが、ついに来てしまった現実と向き合うため視線を扉の方へ……




「さ………佐助ッ………」


幸村も幾分緊張しているらしく、声が上ずっていた。

才蔵の心境は、「どうにかしてくれよ……この『初めて出来た彼女を家に連れてきた息子と、それを迎える母親』な二人……」

といった感じで呆れ気味だった。




「客人をお連れしたぞ」

「いらっしゃ………ッ!?」




佐助と才蔵は絶句した。





「こちら政宗殿です!」




幸村が紹介した、後から入ってきた人物は男だった。



「政宗殿!こっちが幼馴染みの佐助で、こっちが店員の才蔵です」

「……………あっ!」



予想を裏切られて男だったことへの戸惑いと、政宗の立ち振舞いに魅入ってしまい、二人は反応が遅れてしまった。



「あ、こっちへどうぞ」




カウンターへ案内した。



「いらっしゃい……え〜っと、何飲む?」

「居酒屋に来て何だが、酒はいい」

「うちはご飯目当てのお客が多いから平気だよ」



佐助は動揺を見せない笑みを浮かべて対応した。



「佐助のご飯は何でも美味しいのですよ!」

「ククッ………褒めっぱなしだよな」

「はい!きっと政宗殿も気に入って下さると思います」



幸村はニコニコとしているので、自然と政宗の顔も緩んでしまう。



「楽しみだな」

「はい!佐助ッ!オムライス2つ頼むぞ」

「オムライスでいいの?」

「うむ!某の好物を政宗殿も食べてみたいと仰ってな」

「確かに旦那好きだもんね……その前に……え〜っと………政宗君って……旦那に携帯買ってくれたよね?」



佐助は探るような質問を投げ掛けた。



「……あぁ」

「そっか〜……うん、じゃあ少し待っててね」



作り笑いだと気付かれないように注意しながら笑いかけ、踵を返して調理を始めた。




「………ふぅ……ん」

「え?政宗殿?」

「何でもねぇよ」



政宗は佐助が言いたそうなことや、幸村が普段自分の話をどんな感じでしているのかを悟り、ニヤリと笑った。




「幸村さんがお世話になってまーす」

「Thanks」




才蔵は烏龍茶をカウンターに置いた。



「佐助の飯はお袋の味なんですよ………さすが幸村さんのオカンと言うべきか……」

「才蔵!余計なこと言うな!」

「そうだぞ!何故佐助が母なのだ!?」

「……少しは自覚しろよ」



才蔵は同時に二人からのツッコミを受け、ぼやいていた。



「クククッ………」



そんなやり取りを見て政宗は声を殺して笑っていた。












×××××××××××××××

オマケ


「はいお待ち〜」

「おぉ〜!」



ふわふわ卵のオムライスが用意された。



「……旦那ってば、高校入るくらいまでオムライスに旗を立てないと駄々こねてたんだよ」

「佐助っ!!」

「ヨウジに国旗つけてさ〜……」

「ハハハッ」

「佐助ぇ!!」



佐助の暴露話に政宗や周囲の客にも笑われて、幸村は真っ赤になってしまった。

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