番狂わせ
9×14(サク+タン)








「お前ら、ホントにポケベル知らないのか!?」
「何すかそれ??」
「名前だけなら聞いたことありますけどね」
「ま、じ、かッ」
丹波はロッカールームで世良と赤崎を前に愕然として脱力していった。

「フフフ・・・・お丹さんショックで熱出そう・・・・」
10個の歳の差を感じて遠い眼だ。

「じゃあお前等って、携帯即持ちだったのか?」
「俺、少しピッチ持ってましたよ?」
「俺は携帯っすね」
「へぇーそーですかー・・・・今のガキ共は贅沢なもんだねー」
恵まれた通信手段が揃う時代に生まれ育った後輩達を妬ましく思って丹波は少し膨れた。


ガチャ


「あ、堺さんお疲れーっす!!」
「おぉ」
マッサージを受けて戻ってきた堺に世良は一礼をした。

「・・・おい」
「あ、はいッ!?」
世良の背筋がピンと伸びるくらい不機嫌そうな堺の声。

「違う、俺だよ・・・何?」
「ぇ・・・・」
丹波は立ち上がり堺に近寄る。

「お前、アレ知らねぇか」
「んー?・・・・こないだカバンの内ポケに入れてなかったか」
「ぁ・・・・おぉ」
堺は探し物の存在を思い出し、自分のロッカーへと向かって行ったので、丹波は若手2人の元へ戻ってきた。

「何?その顔?」
ポカーンと見上げる世良に丹波は首を傾げた。

「丹さんスゴイっすね!」
「何がよ?」
「だって今、堺さんこっち見てなかったから誰呼んでるのか分からなかったのに丹さん、自分だって分かったし!!」
「じゃあ世良さんは何で返事してんだよ」
「不機嫌そうだったからまた俺何かやらかしたっけ?って焦ったから」
「はは」
キラキラした羨望の眼差しを受けながら丹波は座り込んだ。

「それに『アレ』だけで何のことか分かるなんてホントすげーっすよ!」
「そうか?」
「何か熟年夫婦みたいっすね」
「夫婦って、俺男だから」
世良の感動に引き気味な丹波の笑いは乾いていた。

「固有名詞が出てこない老化現象じゃないっすか」
「うわ〜赤崎くん怖いもの知らずなこと言うね〜!堺に報告しよっと」
「ちょっと!相棒を売らないで下さいよ」
「知りませ〜ん」
世良とは逆に冷ややかな反応をした赤崎をからかって楽しそうに笑った。

「でもなんつーか、結構分かるもんだぜ?堺って分かりやすい奴だし」
「え?俺は全然分かんないっすよ!?何で堺さんが急に怒ったりすんのか全然ッ」
「それは世良さんが無神経だからっすよ」
「赤崎テメッ!やっぱ1回堺さんにシメられてこい!」
「はははっ・・・・んじゃ、俺帰るわ」
「あ、はい?」
よっこいせ、と丹波が立ち上がると着替えが終わった堺が現れた。

「じゃ!お疲れ〜」
「お疲れ」
「お、お疲れっした!!」
「ウッス」
丹波は手をひらひらと振りながら、堺は無愛想に一言口にしただけでロッカールームを後にしていった。

「び・・・・ビビったぁ!!丹さんどこで堺さんのこと見てたんだ??タイミングばっちりだし!!」
「まぁ、確かに何かスゴイっすね」
「すげー・・・・丹さんってよく出来た奥さんに見えてきた」
先輩二人が立ち去って残った後輩達は感心していた。

「けど、外面と本当の姿が違ったらどうする?」
「うぉ!?ガミさん居たんすか」
世良は突然背後から声を掛けられてビクッと身体を揺らした。

「堺さんがあんな亭主関白そうに見えて家では床上手で淫らな奥さんだったりしたら面白いよなー」
「は!?」
「ご飯にする?それともオ・レ?って裸エプロン姿だったりしてね?」
「ぎゃー!!!!ガミさんのバカァッ!!!俺今超想像しちゃったじゃないですか!!!」
世良は真っ赤になった顔を両手で覆って叫び悶えた。

「はっはっは世良は想像力豊かで若いなぁ〜」
「まぁ、堺さんなら『俺の作った飯を後回しにする奴は地獄に落ちろ、そして二度と俺の前に現れるな』だと思いますけどね」
「あははっ!言えてる!赤崎もよく分かってきてるじゃないか」
石神は赤崎の肩をポンポンと叩いた。

「けど、お前は1度堺さんにシメられてこい」
「は!?何で!!」
「何となく」
「ぎゃー!!!堺さんの裸エプロンんんん!!!!」
「世良さん、あんたいい加減うるさいよ!?」
悶絶している世良に、赤崎は八つ当たりをした。



堺と丹波の内なる姿は二人にしか分からない真実





13.09.14
×××××××××
言葉にしなくても通じ合うサクタン夫婦。
丹さんの手のひらで転がされてしまえばいい。

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あきゅろす。
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