番狂わせ
1人より2人で(ホシ×サク)







「堺さんって、俺のことオカズにしたりするんですか?」
「・・・・・は・・・・?」



堺は言葉を失った。
ガタイが良くて男臭い星野が乙女のように恥じらいながら理解不能な日本語をしゃべったからだ。


「だから、堺さんって」
「待て、2度も同じことを口にするな」
堺は手を前に出して星野を制する。

「じゃあ、どうなんですか?」
「・・・・はぁ・・・・」
ドキドキとしているのだろう。
期待に満ちた瞳と不満げな口元。
堺は眩暈がしてきて溜め息をついた。


「何でお前なんかをネタにヌかなきゃなんねぇんだよ」
「は!?」
呆れたように言い放たれた言葉に星野は目の色が変わる。

「あんた、何さらっと酷いこと言ってんだよ!」
「何が酷いだ・・・・お前の言ってることの方が俺には残酷だろうが」
「残酷って、ちょっと!!」
堺は飲みかけのマグカップ二つを持ってソファから立ち上がった。

「堺さん!俺のこと好きじゃないのかよ!」
「んぐッ!!」
堺は歩きながら飲み干そうとしていたので、星野の切羽詰まった呼びかけに咽せてしまった。

「ゲホッ・・・・テメェ・・・」
口元を拭いながら堺は睨みつけた。

「だって、そう思うだろ・・・・普通」
「・・・・ゲホ・・・・普通で考えてるから残酷なんだよ」
「ッ!?」
キッチンへ向かう堺を星野は追わなかった。
立ち尽くしたまま言葉の意味を考える。

普通が残酷?
好きな人に欲情することがおかしいことか?
男が相手という点で普通ではないからか?


星野はキッチンへ行くと、堺はちょうどマグカップを洗い終え手を拭いていた。

「堺さん・・・・」
「何だよ」
「俺、堺さんのこと考えてオナニーしますよ」
「・・・だろうな」
堺は星野と目を合わさない。

「俺、堺さんのこと好きだからムラムラしてたまんないですよ」
「・・・・あっそ」
素っ気ない返事でリビングに戻ろうとする堺の腕を星野は掴んだ。

「離せッ」
「俺おかしくないだろ?」
力強い大きな手は簡単に振り解けない。

「好きな奴とヤリたくてたまんないのに出来ない時は仕方なく1人でするだろ?」
「それは普通の考え方だ」
「普通じゃおかしいのかよ?」
「普通じゃないからおかしいんだろうが!!」
「ッ!?」
堺の声に一瞬怯んだため、掴んだ手は振り払われた。

「お・・・・男同士だから普通じゃないって言いたいのか?」
「そんなのは百も承知だ」
「じゃあ、何が・・・・」
「俺とお前じゃ違うんだよ」
「え・・・・」
「これ以上俺に言わせんな」
堺は自嘲めいた笑みを浮かべリビングへと戻っていく。

「な、んだよ・・・・いつもは言わなくてもいいような一言まで平気で言うのによぉ」
理解し合えないなんて辛過ぎる。
星野は奥歯を噛み締めた。


「堺さんッ」
星野は堺を後ろから抱き締めた。

「意味分かんねぇっすよ」
「は、なせッ!!!」
「ちゃんと説明してくれるまで離さないよ」
「星野、テメェッ!!」
「暴れて怪我すんのはやめて下さいよ」
「だったら離せよ筋肉馬鹿がッ!!」
星野に抑えつけられた腕の中で堺は暴れたが、抜け出せる気は少しもなかった。

「何なんだよアンタは・・・・」
「・・・・」
「堺さんが年上だからってオナニーしなくても平気なくらい枯れてるわけじゃないし、むしろ感度はイイくらいだし」
「さ、わんなッ!!!」
星野は堺の股間に手を伸ばした。

「俺への不満なのか?俺が下手だから思い出したくもないのか?」
「よ・・・せッ」
「ほら・・・・絶対堺さんだって1人でしなきゃ収まらないって」
ズボン越しに緩く触っただけで堺の硬度は増していた。

「俺とのセックスで堺さんちゃんとイクし、、俺下手じゃないと思うんだけどそんなに思い出すのが癪なのかよ?」
「うぁ・・・・癪だ・・・」
「・・・・」
絞り出すような気弱な声。
星野は堺が抵抗をしなくなったこともあり、抑える力を弱め、股間からも手を離した。

「お前は突っ込む方だからいいかもしれねぇが、俺は違うんだよ」
「・・・・・」
堺は大きく息を吐き出した。
埒があかないと悟ったからだ。


「お前に好き勝手身体触られて舐められて、馬鹿みてぇに感じて」
堺の声に怒気は含まれていない。
星野は身動き一つせずに堺の言葉を聞いた。

「尻に突っ込まれてアホみてぇに喘いでイキまくって・・・・それで、お前ともっとヤリてぇって考えながらオナニーしろって言うのかよ」
「ッ─────────」
星野は『残酷』という言葉の意味が理解出来た。
男としてのプライドがあるのに、受け入れてくれている堺の気持ちを汲んでいなかったことを悔いた。

「堺さん・・・・」
「馬鹿星野が・・・・」
今度は優しくぎゅうっと抱き締め、堺の肩口に顔を埋めた。

「俺、堺さんともっとしたい・・・」
「あっそ」
「堺さんも俺もオナニーしなくてもいい位しようぜ」
「冗談じゃねぇよ」
堺は軽く笑った。

「セックスじゃなくてもいいから、もっと、ほら、な?」
「な、じゃねぇよバーカ」
堺は身体を捻り、後ろにいる星野の頬を撫でた。

「まぁ、セックスでいいんじゃねぇ?」
「さ、かいさんッ!!!」
「ンッ・・・」
微笑む堺にグッときた星野は、堺の身体を反転させて抱き直し、キスをする。
それに応えるように堺も星野の背中に腕を回した。


「堺さんともっとヤリたいの我慢しなくていいですか?」
「してんのかよ」
「俺、堺さんの負担考えて結構耐えてるんだぜ?」
「ふぅん」
「料理してる姿見てムラッときた時とか、物
足りなかった時とか」
「・・・・おい」
舌を絡めていた動きが止まる。

「お前、それってここでもオナニーしてるってことじゃねぇよな?」
「まぁたまには」
「・・・・」
「は?何??」
堺の表情は曇り、星野の身体を押して距離を取る。

「何でティッシュがこんなに捨ててあるのかと思ってたけどよぉ・・・・」
「堺さん?」
「出禁だ!出禁!!」
「はぁ!!??」
堺は人相も声色も変わって星野は唖然とした。

「人んちで何してんだテメェはよ!!」
「は?何キレてんだよ??俺の優しさだろ?」
「どこがだ!」
「もしかして、相手がいるのに1人でしやがって!って怒ってる?」
「はぁ?お前の脳味噌は愉快だなぁ」
楽観的で自意識過剰な星野に堺は怒りを通り越した。

「絶対そうだ!!拗ねてるんでしょ!!」
「んなわけねぇだろ!!どこまでお前はデリカシーないんだよ!!」
「俺、結構堺さんの性格分かってますからね!」
「分かってんだったらさっさと出てけッ」
「とりあえずベッド行こうぜ」
「はぁあ!?」
星野は堺の腕を掴んで引っ張る。

「俺さっきから我慢してるんで」
「お前のオナニー感覚で犯される趣味はねぇぞ!!」
「ヤッてる時は素直なるのにな」
「テメェッ!!!!」
堺は真っ赤になる。

「堺さん、超可愛い」
「絶対ヤラせねぇぞ!おいッ!!」


星野のくせに生意気だ!!!






13.07.21
×××××××××

オナニーの日にちなんで。
堺さんの愛情の深さが表れました。
たまには星野優位もありでしょう?



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あきゅろす。
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