戦国
呼び名(佐+α)
「Hey!手合わせしようぜ幸村!」
「えぇ!?ちょっと竜の旦那、今日は茶会……」
「はい!政宗殿!」
「旦那まで!?」
ここは上田。
たまには戦から離れよう……
という、政宗の粋な計らいで茶の席が設けられた。
しかし蒼紅の二人は顔を合わせると、血が騒ぐのか座っていられなかったのだ。
「旦那!客人は!?」
「失礼のないようにもてなすのだぞ!」
「あ……あんたが一番無礼だよ………」
茶請けの乗った盆を持ったまま、走り去っていく茶色の尻尾に溜め息が出た佐助だった。
「お互い主には苦労するな………」
「右目の旦那………」
「あっちは俺が見てる」
「ははは〜……よろしく」
佐助の肩はガクッと落ちた。
「奴等はいつもあんな調子か?」
「まぁね………」
「ハハッ!確かに苦労してそうだな!」
他人事なので豪快に笑うのは銀髪の鬼。
この席を狙ったかのように上田に現れたのだ。
「笑い事じゃないよ〜………屋敷とか平気で壊すんだよ!あの人達っ」
「へぇ〜……それくれよ」
「はいはい……」
元親は茶請けを催促して、一人くつろいでいた。
「右目の旦那がちゃんと止めてくれればいいけどなぁ〜……」
「これ、うめぇな」
「………あ〜ぁ………竜の旦那が気に入るように丹精込めたのに」
佐助も座り、淡い桃色の茶請けを手にとった。
「………お前ってよ、誰でも旦那って呼ぶよな」
「………かな?」
指摘をした元親はニヤリと笑った。
「旦那旦那言って……誰んとこ嫁ぎてぇんだよ?」
「……………」
「それか、誰の下でも旦那様〜って喘ぎたいってか?」
馬鹿にするように笑う元親に、佐助の表情は曇った。
「…………残念だけど逆だよ」
「は?」
元親は予想外の返答に耳を疑った。
「旦那って呼んで下手に出ておいて、高慢になった所を組み伏せたいじゃん?」
「てめぇ………」
佐助の裏の顔を見てしまった元親の笑顔は引きつった。
「まぁ〜……主の命令だし、たっぷりもてなしてあげるよ♪」
「っ!!」
佐助の微笑みは本能が危険だと察知した。
「なっ………!?」
逃げ出そうとした体は言うことを効かなかった。
「軽い痺れ薬だよ………本当はあの二人がお茶の後に暴れないように仕込んだんだけど、前だったから意味なくなっちゃってねぇ〜」
「くっ………」
「楽しもうか?………鬼の旦那♪」
「────…………
元親の助けを呼ぶ声は、空しくも蒼紅の一騎討ちで掻き消されてしまった…………
×××××××××××××××
11月22日は「いい夫婦の日」ということで、
夫婦ネタにしました!(←どこが?)
旦那って呼ぶ佐助が可愛くて、ついつい歪んだ子にしちゃいました(笑)
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