戦国
八月三日(政+佐幸)
「旦那〜♪これから俺様偵察に出るから後は良い子にしててね〜」
「ならぬ」
「……はい?」
佐助は思わぬ主の返答で聞き返してしまった。
「……奥州へ行くのだろう?」
「えっ……何言ってんのさぁ〜」
「奥州へ行くのだろう!?」
「え……あ……」
幸村の勢いに圧されて佐助は動揺してしまった。
「政宗殿の生誕を祝いに行くのだろう!?」
「ぅ……」
「お主だけ抜け駆けしようなど許さぬ!!」
幸村は佐助に掴み掛かった。
「某が奥州へ行くからそなたはここへ残れ!」
「はぃぃ!?何で旦那が奥州へ行って俺は留守番なのさ!?」
「己だけ何度も身軽に行っておるようだが、今回だけは許さん!」
佐助も退かずに押し返した。
「ちょっと聞き捨てならないんだけど〜?旦那が恋文書くから俺様は運んでるんだよ!?」
「こっ恋文など!そ、某はただお元気かと思っているだけで……」
「今更何言ってんの?竜の旦那が大好きで独占したくて俺に嫉妬してるくせに!」
「そそそ某は………ッ」
幸村は自分では政宗への想いを秘めているつもりだったので、図星を刺されて真っ赤になった。
「そっ、某はそんな不埒な気持ちなどっ」
「ないの?本当?」
「う……」
佐助に顔を近づけられて思わず視線を逸らしてしまった。
「俺様は竜の旦那に恋してるからね」
「こっ…………!?」
幸村は佐助の告白に鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「旦那がそういう気持ちじゃないんなら、俺の邪魔しないでくれる?」
佐助の真剣な顔つきに、破廉恥と叫びそうになるのを抑えた。
「佐助………」
「だから俺は会いに行きたいし、止めないで欲しい」
「某はっ………」
幸村は一度目を瞑ってから佐助に向き合った。
「……某も政宗殿から身を引くつもりはない」
「上出来♪」
佐助はにこっと笑ったが、すぐに目を細めた。
「でも、俺だって一歩も引く気はないよ」
「佐助が相手なら良い勝負が出来そうだな」
「そうかな?旦那は竜の旦那を前にすると何も出来ないじゃん」
幸村と佐助は座り込んだ。
「俺様は積極的だから旦那なんて目じゃないよ」
「そんなことはっ」
「だって旦那は手を繋ぐのが精一杯じゃない?俺はそれ以上攻めるからね」
「な……何をすると言うのだ」
幸村はまた赤くなった。
「抱き締めて口付けして愛撫して寝所を共にするよ!」
「破廉恥ーっ!!!」
佐助はしてやったり顔だが、幸村はあまりの衝撃に顔を手で覆って絶叫した。
「お主は何ということを考えておるのだっ!!」
「えぇ〜?旦那も想像してみたらいいじゃん!竜の旦那の肩を抱き寄せたり、膝枕してもらったりとか」
「なっ、な……ま、政宗殿の破廉恥ーッ!!」
幸村は佐助の言葉に頭の中で情景を描いてしまい、
またしても大絶叫をした。
「誰が破廉恥だって?」
「まままま政宗殿っ!?」
「嘘……何で竜の旦那が……」
突然の声の主に真田主従は慌てた。
「奥州で騒ぎ囃されるは疲れるからな……暇潰しに来てやったよ!」
「い……いつから居たの?」
全く気配に気付かなかった佐助は、いつもの余裕がなかった。
「………さぁな」
政宗はニヤリと笑った。
あんな話の後で気が高ぶってしまっているため、幸村は吊り上げられた唇に目が奪われた。
「万が一お前らと行き違っちまったら無駄足になるから早く来てみたが………間に合ったみてぇだな?」
「う、うん……まぁね」
佐助は自分の告白も聞かれていたことに気付き、ばつが悪かった。
「ククッ………まだ早いが言いたいことは聞いてやるよ?」
幸村と佐助はちらりと視線を交わし、
「政宗殿!」「竜の旦那」
「お慕い申し上げますっ!!」
「生まれてきてくれてありが……っと旦那ぁ!!何言ってんのさ!?」
「ぬぉっ!!」
祝言の席から逃げてきたのに祝われることを欲していると理解した佐助と、勘違いで暴走した幸村だった。
「うぉぉー!!今のは忘れて下されぇー!!政宗殿ぉ!生誕おめでとうでござるぅ!!」
「だ、旦那っ落ち着いて!」
取り乱す幸村と宥める佐助を見ていた政宗は笑みが溢れてしまった。
「Ha!やっぱりこっちに来て良かったよ……お前ら二人共相手してやるぜ」
政宗は部屋の上座に座り、二人に手を差し出した。
「竜の旦那……そんなこと言ったら俺様ッ」
「いいじゃねぇか……俺を楽しませてくれよ」
「知らないからね……」
佐助は政宗との距離を縮めた。
「幸村…………来い」
「は、はい」
政宗に呼ばれて、思わず生唾を飲み込んでしまった。
「さぁ………Birthday partyの時間だぜ────」
主役の竜は妖艶な笑みを浮かべた。
×××××××××××××××
政宗様ー!!
誕生日おめでとぉぉぉ
好きなキャラでお祝いしてみました。
きっと奥州では小十郎達は慌ててるんでしょうね。
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