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2代目拍手お礼A(ダイ嬢)
ダイヤ⇔お嬢様
「きゃああぁぁあ!!」
突如響いた彼女の悲鳴。
その取り乱した声に驚いて振り向こうとした体が前方からのどんっという鈍い衝撃にぐらりと揺れる。
重力には逆らえず、そのまま仰向けに倒れる視界に一瞬散った黒いものは、胸に飛び付いてきた彼女の髪の毛だったのだと理解するのに数秒かかった。
乱れた髪の毛を気にする余裕すら無いのか、いつもはすました顔で優雅に微笑む彼女が今は声にならない声を出しながら震えて額を押し付けている。
なんだか動くこともできないままそっと視線だけ投げ掛けてみると、何かにひどく脅えたような表情で顔を歪めた彼女がぎゅうっと抱きついてきているのが見えて、ああもうどうしよう心臓の音かなり大音量だと思うよ多分きっとぜったい。
「ど、どうしたの?」
焦りを誤魔化すように早口で声をかけると、彼女の震えた人指し指がぎこちなく頭上を指す。
その先をよく見ると、一体どこからぶらさがっているのか、一匹の小さな蜘蛛。
「…お嬢様ぁー…?」
もしかしてこういうの苦手なの?と問えば、何度か微かに首肯しながらもぎゅうっと抱きつく腕を強めたりするから、ああ本当どうしようか知れば知るほどこのひとを愛しく思ってしまうんだ。
(心臓、うるさい)
どくどくと響く左胸の音に頭の中で制止をかけたところで聞きやしない。
全力疾走中の心臓はどうやら短距離の世界記録にでも挑戦しているらしい。
「い、今取ってあげるから」
少しじっとしててね、と声をかけて頭上の小さな蜘蛛に手を伸ばしかけて、
「あ、」
するりと手を避けるように蜘蛛が上へ逃げていく。
ほんの少し手が届かなくなった場所でぴたりと動きを止めたその蜘蛛はけだるそうに糸の先でぶらぶら揺れている。
どうしました、と恐る恐る顔を上げた君の視界を遮るように抱き締める。
見ない方がいいよまだいるから。
そう小さく告げると慌ててぎゅっと抱きつき直した彼女の耳がほんの少し赤くなっていたのには気付かないふりをして、彼女の少し乱れた髪の毛を優しく撫でる。
頭上をちらりと見上げ、もう少しならそこにいてもいいよ、と心の中で呟くと、蜘蛛はまるで応えるかのように二、三度揺れてするするとまたほんの少し届かない空中へ移動した。
「…まだ、いますか?」
「うん、いるみたい」
脅えてる彼女に申し訳ないなと思いながらも、その小さな蜘蛛にほんの少しだけ感謝する。
怖がる彼女を少しでも安心させてあげようとそっと撫でた髪の毛が、開け放した窓から入った風に揺れるのを見ながら、こんなのもたまには悪くないかななんて思ったのは内緒だけれども。
END
私が書いたにしてはめずらしい甘目なダイ嬢でした。
いやー、
ぐっじょぶ蜘蛛!
よくやった(笑)
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