[携帯モード] [URL送信]
君は彼に似ている(ゲン×シロナ)
※こちらのゲンさんはアーロン様の生まれ変わりという設定になっております







(…なんだ?この男は…)





実力のあるトレーナーが此処、こうてつじまで修行を行っているという噂を聞き付けたから、その男というのは一体どれほどのものだろうかとはるばるミオから船に乗りとりあえずここまでやってきたまではいい。

しかし、目の前にいるこの目深に帽子を被った長身痩躯の男は人の顔を見るなりとつぜん涙を滝のように流しながらよろよろとこちらに近付いてくる。というかもう既に顔がかなり近くまできているじゃないかいったいなんなんだこの男は。

流石に気味が悪く、ちょっと待て、顔が近すぎやしないかとその男に抗議をしてみるとその男は我に返ったかのように数メートルほど飛び退き後退り(自分から寄ってきたくせに失礼な男だな)垂直に1.5m程飛び上がりヘッドスライディングで私の足下に滑り込みつつ土下座を20回程繰り返してすまないすまないと謝り倒した後、落ち込んだように縮こまって動かなくなった。

(四天王の面々もかなり個性的ではあるけれど、こんなに奇抜な人間はまれに見ないな…)

どんなにおかしな行動に走られたあとでも流石に目の前で弱っている(?)人間を見て気の毒に思わない人間はいないだろう。
積極的に関わりたいとは思いもしなかったがとりあえず身の上話の一つくらいなら聞いてやろうではないか。

「一体どうしたんだ?」

男はうなだれていた頭を静かにゆっくりと持ち上げてぼんやりと私に焦点を合わせ、しかしすぐにうつ向いて右手の親指で左目尻についた涙の雫を払ったあと(涙くらい普通に拭けないのか?)、ふっと笑みを溢して私を見つめた。


なんだ笑うと案外普通の人間だ。
変なところに感心しかけた時、その男はしみじみと語り始めた。



「ずっと昔、死別した友がいたんです。君はその友によく似ていたもので、つい。」


…なんだ、普通の人間じゃないか。さっきのはちょっと気が動転していたんだろうな。(それにしてもあれは無い気もするが)
この少しはにかんだように笑う男は私に死に別れた友を重ねていただけだったのか。


「…先程は大変な失礼をしてしまったね。君の名はなんと言うんだい?」
「シロナ。そっちは?」
「ゲンだ。…そうかシロナ、いい名だ」


普通の人間の顔で普通の人間の台詞を言われると案外このゲンという男は格好がつくものらしく、不覚にもその台詞と笑顔にどきりとしてしまったりして何だか照れくさくなって無愛想にそんなことはないと下を向いた。しまったこれでは幾分失礼と思われはしなかっただろうか。

少し顔を上げて様子を窺えばこの男は意外にも微笑を溢していて、なんだろうそんなに変なことをしたのだろうかと内心焦る。


「そういう所もよく似ている。あいつも誉められたりすると照れて無愛想になったものだったよ」


そう言って、はははと笑って私の頭を撫でるゲンの瞳が己の子を想うように優しく細められるのを見て、ああその友というのはきっととても大切にされていたのだろうと何だか切なくなった。


「…君に会えて良かったよシロナ」


またいつかこの近くに寄る時は顔を見せて欲しい。そう言って笑うこの男の言葉に心持ち顔が熱くなったような気がして私が答えあぐねているのを見ていたゲンは、そうだ、と思い出したように言って何やら懐をごそごそと探り始める。
何をしているのかと思いきや、取り出したるは三角形の耳状のものが二つついているカチューシャ。しかも私の見間違いでなければそれはルカリオの耳だ。


(…ルカリオの耳のついたカチューシャ?)


どうしてそんなものを持っているのかというツッコミよりも何よりも、それの使用目的に身震いしながら最初に笑った時よりも三割増し輝いた笑顔を向けながら言ったその男の言葉に戦慄する。


「つけてあげるよ、君に似合うと思うんだ」






気が付いた時には其処は血の海が広がっていて、私の右拳から上半身にかけてまでがこの瀕死で倒れている変態の返り血でところどころ赤い斑点が浮かび上がっている。



こんな変態の言葉にときめいた私が馬鹿だった。

乙女心を返せと叫びつつ、私は泣きながらこうてつじまを後にした。






うう、とよろめきながら立ち上がったゲンはいまだ笑みを崩さずに呟いた。


「彼女のあの髪飾り…そっくりだった。我が友ルカリオに…」

その瞳は野望に満ち溢れている。

(絶対探しだしてあの人にルカ耳をつけさせてやろう。絶対似合う。も、絶対可愛い!)




…どうやら変なスイッチが入ってしまったらしい彼がそう固く胸に誓いを立てていたのは実は彼なりの初恋の形だったとは一体誰が気付いただろうか。いや、気付かない。

しかしこの後彼はすぐにシロナを追ってシンオウ各地を渡り歩く。
すべてはルカ耳シロナの為に。



彼の初恋、そしてシロナの運命や如何に!?





END



***
なんかもうぐだぐだですすいません;;;

ゲンシロが今熱いです!

なんだかんだいってシロナも初めてときめいた相手はゲンだといいな。

あほ可愛いめのゲンさんと、つんでれシロナ嬢の恋物語はいかなる運命をたどるのでしょうか?(笑)



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!