この暗い海で
「帰りたい」
この場所によばれてから、ずっとそう思っていた。
ここには、この暗い海には誰もいないから
兄も友人も、誰一人…
「帰ろう」
そう言った彼は、この誰もいない世界まで私を探しにきてくれていて
彼の言葉に振り向いた私に、微笑んで続けた。
「迎えにきたんだから」
少し寂し気な笑顔だったけど、私を気遣ってくれてるってことは解ってたから
だから、私も精一杯、笑顔をつくって頷いた。
──強くなったつもりだった
だけど、それはつもりでしかなくて
結局、誰かの優しさに寄りかかって生きてる。
──そんなんじゃダメだ
そう教えてくれたのも彼で
その彼の言葉を認めたくなかったから
その弱さが、ここに引きずり込まれる原因になった。
──強くならなくちゃ
本当の意味で強く
だから、彼の優しさにすがるのは甘えなんだと解っていた。
──だけど
強くなるから、目の前のあなたと同じくらい強くなるから
今だけは、優しさに甘えさせて
──お願い
今だけ、だから
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