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君の名前、僕の名前
その時の顔が忘れられない。





【君の名前、僕の名前】





「…は?」

「だから…僕、君の名前知らないんだが」

久々に遊びに来たお妙ちゃんの家に彼はいた。
お妙ちゃんはお茶を入れてくると台所に立ったままで、やる事のない僕はというと庭で大きな犬と戯れている新八君達を見ていた。
縁側に寝そべっている彼の後ろ姿が視界に入り、ふわふわと風に揺れる銀髪を見ていたらふと浮かんだ疑問。

──そういえば彼の名前って…?──

だから言ったのだ。

『僕は君の名前を知らない』と

聞かれた本人は寝そべったままで、顔をこちらに向けて起き上がる気配はない。

「お嬢さん…そりゃあ今更ってやつじゃないかね?」

だれがお嬢さんだ、とも思ったが失礼な事を聞いているのは分かっているのでそこは流す事にした。

「お妙ちゃんや新八君が‘銀さん’と呼んでいるのは知っているがしっかり名前を知っている訳じゃない」

「……そうかい」

けだるそうにに立ち上がり、僕の目の前に座り視線を縁側に向けたまま話し始めた。

「あー…まぁあれだな、今更自己紹介ーつうのもなんか…ほら、あれだよ」

そうやってしばらく口ごもっていたが…

「…銀時だ、坂田銀時」

「…銀…と…き?」

見上げた彼の顔は今まで見た事ないぐらい穏やかで…

「まぁ銀さんーでも銀時ーでも、好きに呼びゃあいいさ…九兵衛」

そう言って頭を撫でてきた。

あぁ、何だろうこの感じ。

痛いような優しいような。
お妙ちゃんに抱いていた気持ちとは少し違う、不可解な感情。

でも…

僕はあの時の銀時の顔を

きっと一生忘れない。






●あとがき
九ちゃんて銀さんの名前知らないんじゃないか?と友人と話してた結果がこれになりました(汗)
なかなかに消化不良感がいなめませんが多分あの後「うがああ!」って投げられてます。
銀さんは名前知らないって言われて少し凹んでるといい…(笑)


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