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最後のわがままです、
癒す
 


優しく綺麗な笑顔で夢から覚ましてほしい。我が儘だと、自覚しているけれど。


“癒す”


ハッとして目を開けるとあのいけすかない男の顎と鼻の穴が広がった。
「……うわ、」
ゴチン。思わず勢いをつけて起き上がったせいで額と顎がぶつかった。幸い、石頭なのでこちらにダメージはほとんどないが、男は痛かったのだろう。顎を押さえ蹲ってしまった。
「……悪い」
そんなこと欠片も思っていないが、痛そうに呻き声を上げる男に少し良心が傷んだ。良心が傷む。ハッとして、己の胸に視線を落とした。少し後悔。気を失う前と変わらず、血液が流れていた。幸い、貧血にはなっていないようだが。
「……あー…倒れるなよ?」
まだ痛いのかもしれない。それでもこちらを見て、心配してくれる辺り、自分が思うより存外、優しいのだろう。
「……倒れないし、」
見るのは二回目だ。慣れはしないがもう倒れない。いや、ショッキングな光景ではあるが。
「……そうか、」
むすり、として答えると、男は朗らかに笑い、自分の頭を撫でた。普通なら、そんなことをされれば容赦なく手を叩き落とすのだが、何故だかその撫でる手が酷く懐かしく、払い退けることができなかった。


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あきゅろす。
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