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死にたがりのアイロニー
死にたがりのアイロニー


「殺してくれ」

なんて言ったらどうする?


死にたがりのアイロニー
 

「…何、言ってんの?」

自分から訊いたくせに、何事もなかったように弁当をつついている春樹に困惑する。

──何だ、何があった?

答えを望んでなどいないのか、それともすぐに答えが出ないことをわかっているからか、春樹が顔を上げない。
芳樹は困り果てた。
この、芳樹以外、自分にさえ無関心などうしようもなく愛おしい恋人は何を望んでいるのだ、真っ昼間に。

「…何かあった?」
「…別に、」

チラリ、こちらを一瞬だけ見てすぐに視線を弁当へと移してしまった。
やはり芳樹に非があるのは間違いないらしい。
しかし思い当たることなど無いのだ。

何を望んでいるのか、何をやらかしたのかさっぱり分からない。
食べ終わっていない弁当に手をつける気配もない芳樹を盗み見、春樹は小さく息を溢した。

──気付かないよね、やっぱり。


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