小説 3
夜に棲む人・6 (完結・R18)
ローションなんかは売ってねーから。そう言って阿部君は、コンビニの袋から保湿クリームを出した。
「それともお前、持ってた?」
意地悪く言われて首を振る。
「だろうな、このベッド、お前のニオイしかしねーもん。マジ、オンナ、いねーんだな」
阿部君はからかうように笑いながら、オレのズボンを下着ごと引き下ろした。はじけるように飛び出したオレの陰茎を、彼は、ちゅうちょなく掴んで口に入れる。
「あああ、やああっ」
優しく舐められ、強く吸われ、イタズラに歯を立てられて、ブルブルと震える。
「こっから血ィ吸ったら、ウメーかな?」
そんな恐ろしい事を言いながら、軽く歯を当ててくるの、絶対ワザとだ。
意地悪な刺激に身もだえしてる間にも、阿部君はオレの穴に保湿クリームを塗り込めていく。丁寧に塗りながら、拓いていく。
「顔、真っ赤でカワイーな。そんな恥ずかしーか?」
阿部君が、少し上擦った声で言った。
恥ずかしかったけど、阿部君の顔をオレも見た。優しく笑ってて、ドキンとする。
オレの性器の先端から、とろとろと蜜がこぼれるのが分かった。
もう無理。もう限界。
「阿部君っ!」
切羽詰まった声で名前を呼ぶと、「分かってる」と返事が来た。
びくん、と背中が跳ねる。
体が、彼を欲しがってる。
自分から大きく開いた脚の間に、阿部君が割って入って来る。
硬くて大きくて熱い何かが、入り口を探して股間をこする。
オレは少し腰を浮かして、それの侵入を助けた。阿部君が、嬉しそうに声もなく笑った。
「あああああっ」
一気に奥まで貫かれて、衝撃に体が弓なりに反る。
息つく暇もなく、ゆるく揺らされ始めて、オレは悲鳴を上げながら、阿部君の背中に爪を立てた。
「三橋、好きだ、三橋」
阿部君が、オレを攻めながらそう言った。
好きだって、何度も。
嬉しくて、喜びにオレの中がヒクヒクと震えた。
中を、こすられる。
ガクガクと揺らされる。
何度も何度も抜き差しされて、愛されて、奥の奥まで貫かれる。
攻める腰は激しいのに、唇は優しい。
「好きだ」
疑いようのない言葉が貰える。
「三橋……」
オレを深く貫いたまま、阿部君が起き上がった。背中に手を添えられて、繋がったままで起こされる。
膝の上に向かい合う形で乗らされて、中の楔が、自重で更に深く刺さった。
「あ、んっ」
甘くうめいて、喉を反らす。
見なくても分かる。きっと彼の目が金に光ってる。
首筋に、ぬるい息がかかった。
それだけでゾクゾクと感じて、オレは、射精して阿部君の腹を汚した。
射精感にびくびくと震える腰ごと、強く抱かれて。
そして――牙、が。
「んんんっ」
甘い声が漏れる。
突き刺される、一瞬の痛み。
だけどすぐに、蕩けるような痺れが、傷口からじんわりと浸みて来る。
そうなったら後は、快感しかなくて。
自分で腰を揺らしながら、首筋の牙を感じて、目を閉じる。
ぬるい血がどんどん溢れて、彼の口を満たすのが分かる。
あの時も、こうだった。
失われた記憶が、うっすらとよみがえる。
8年前、阿部君の誕生日。
オレはこうして……やっぱりこうして、上も下も深く彼に貫かれながら、快感に腰を揺らしていた。
「阿部君」
オレは上ずった声で、彼に言った。
「もう、どこにも行かないで」
阿部君は唇をいったん放し、べろりと牙の痕を舐めた。
「もう、オレの血以外、吸わないで」
広い背中に強く縋りながら懇願したら、阿部君はふふっと耳元で笑った。
そして言った。
「8年間、誰の血も吸ってねーよ」
金色に輝く目が、オレをしっかりと捉える。
もう、一生逃げられないと悟って、嬉しくて嬉しくて鳥肌が立つ。
オレだけの吸血鬼が言った。
「愛してる」
(完)
※AYAME様:150000Hitキリリク、ありがとうございました。吸血鬼パロ、思いっきり趣味に走り、倍の長さになってしまいましたが、いかがだったでしょうか。一緒に楽しんで頂ければいいのですが。「ここをもっと」というご要望があれば、修正しますのでおっしゃって下さい。
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