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小説 3
アナ穴・1 (アナアナの続編・プロ阿部×アナウンサー)
※この話は、アナアナ の続編になります。






『ほら、カメラ回ってんぞ』
 リビングの壁一面を飾る、大画面TV。カメラを持つ人の声が、そこに映るオレを急かすように促す。
 ネクタイを抜かれ、スーツの上着をはぎ取られたオレが寝転がってるのは、ふかふかのソファ。信じらんないって顔で釣り目気味の目を見開いて、キョドキョド視線を揺らしてる。
『い、い、今、私は、あ、阿部選手の……』
『選手って呼ぶなって』
 しどろもどろのオレの声に、阿部さんの声がツッコミを入れる。
『あ、阿部さん、のお宅のリビングにおり、ます。そ、ソファに押し倒され、て、これは一体っどういう状況……っ、ああっ!』
 つっかえまくりの実況が、さらに甘く乱される。
 画面はオレのみっともないアップしか映ってないけど、その下では意地悪な彼の手が、オレの脇腹を撫でていた。
『そ、そんな触り方、したら……っ』
 オレの抗議に、くくっと笑う阿部さん。
 片手にカメラを持ち、片手でオレをなぶりながら、巧みにボタンを外してく。

『そんなって、どんな? ちゃんと分かるよう、口で説明しろ』
 響きのいい低い声が、たしなめつつ笑った。
『お、おおきな手が、さわさわ、とっ! あ、ふああっ。あ、お、オレの、いや私の左の脇腹を……やっ……!』
 奇声を上げながら身悶えるオレを、冷徹に映すカメラ。
 オレの顔のアップから、ゆっくりとズームアウトしながらオレの胸元へと移動する。
 あられもなくはだけられたYシャツ。その下の肌に、プロスポーツ選手らしいゴツゴツした手が這わされた。
『インナー着てねーんだな』
 くくっという笑い声と共に、彼の右手がオレの胸元を撫でまわす。
 薄茶色に凝った乳輪を、ごつごつした指先で撫でられて、映像の中のオレが『ひぃん』と啼いた。

「う、やあっ、やめてください! 見せない、でっ!」
 同じソファに座らされながら、恥ずかしくて身悶える。
 この間撮られたばっかの映像を大画面TVで見せられて、居たたまれなくて恥ずかしい。
「なんで? 興奮すんだろ?」
 その阿部さんの左手には、同じくカメラが回ってて、恥ずかしがるオレの姿を映してる。
 苦手な実況中継を練習させてやってるんだ――って阿部さんは言うけど、単なる趣味の延長だって、いい加減オレにも分かってた。
 日本の守護神、プロ野球・埼玉レオネスの正捕手で、侍ジャパンの正捕手でもある阿部選手。日本中の野球小僧たちの憧れの的でもある彼が、こんなヘンタイだなんて思ってなかった。
「オレはヘンタイじゃねーよ。単にお前のことが気に入ってるだけだ」
 くくっと笑みを浮かべる、端正な唇。精悍で、どこまでも格好良くて、なのに言ってることは残念でコワイ。

『ああっ、やぁっ! な、なんでパンツ、までっ』
 大画面TVから響く、オレの悲鳴がどうにも恥ずかしい。
『悲鳴あげてねーで、実況。ほら』
 楽しそうに促す阿部さん。
『どっ、どういう状況なのか、おっ、わっ、私には理解できて、おりませんっ。ぱ、パンツを取られました。全裸、全裸、です。お、お見苦しくて申し訳、ない、です。や、映さないで! だめぇっ!』
 切羽詰まったオレの声。
 実況なんてまるでできてないけど、それは仕方ないと思う。阿部さんに命じられ、服を脱がされてなぶられて、正常な判断なんてできなかった。
 じたばた暴れるオレの上半身から、カメラがゆっくりと下向きにパンして、オレの裸の股間を映す。
 必死で手で隠してたけど、ビミョーに隠せてないのが分かる。

 モザイクも何もかけられてない陰茎。ズームインしてくのに耐えらんなくて、「やだぁっ!」って叫ぶと、画面の中のオレも同じく『やだぁっ』と啼いた。
『やだじゃねーだろ、こんなにして』
『ひぅっ!』
 カメラに写りこむ阿部さんの右手が、オレの陰茎をぎゅっと掴む。それをそのまま擦り上げられ、『撮らないで!』って啼いたら、パッとオレの顔のアップに切り替わった。
 生白い顔を真っ赤に染めて、口をだらしなく大きく開けて、上ずった声で喘ぐオレ。
 股間のアップとイキ顔のアップ、どっちが恥ずかしいんだろう?
『実況止まってるぞ』
 冷静にツッコむ阿部さんに、アップのオレがいやいやと首を振る。

 もうこの時のオレはパニックになってて、何がどうなってるのか状況の理解もできてなかった。
 ウィスキーで酔ってたせいもあるかも知れない。
 何を言ったかも覚えてない。
『ああっ、すごいっ、巧みな指遣い、です! おっ、わっ、私は、あっという間に追い上げられ、て……っ! あっ、ダメ! お尻、お尻は、……んんんっ!』
 耳をふさいでも聞こえてくる嬌声に、「ぎゃあーっ!」と叫ぶ。
 この後どうなったかなんて、見せられなくても分かってる。
「いやっ、もう! もうビデオ、止めてくだ、さいっ!」
 容赦なく向けられたハンディカメラのレンズの部分を手のひらで塞ぐと、「こら」って短く叱られた。
「成功も失敗も、ちゃんと映像見なきゃ分かんねーだろ」
 って。言ってることは正論だけど、やってることはヘンタイ、だ。

「止めて欲しいのは、録画? 再生?」

 カメラをことんとテーブルに置き、阿部さんがオレの横に座って、ニヤリと微笑む。
 大きな手で、頬を優しく撫でられて、たちまちカアッと赤面した。
「どっちも、で」
「却下だ」
 食い気味に宣言され、うぐっと言葉に詰まる。
 過去のあられもない映像と、今まさに撮られてる録画と――阻止すべきは、2つめの録画、だ。
「ろ、録画、を……」
 震える声でそう言うと、阿部さんはまたニヤリと笑って、「いーぜ」ってオレをソファから立たせた。

「ハンディカムはここに置いて、ベッド行こうか」

 ベッド、って言葉にドキッとしながら、ごくりと生唾を呑み込む。
 逆らうっていう選択肢は、1本目を撮られた時点で、もうないも同然だった。

(続く)

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