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小説 3
ギャップV・1 (大学生×モデル・R−18)
※このお話はギャップギャップU の続編になります。




 白い肌が朱に染まる。
 ぴっちりと筋肉のついた、最上級の体。
 グラビアを見かける度、エロいエロいと思ってたけど、やっぱ思った通りエロい。
 なんかポーズもエロい。
 オレに組み敷かれて、オレに極上の肌を許し、淫靡に身もだえする『オレだけのレン』。

「好きだ、好きだぜ……」
 目いっぱい甘く囁きながら、腰の動きを進めると、レンが声も無くのけ反った。
 長い手足が、シーツの海を跳ねて泳ぐ。
 白い手首とゴツイ黒の腕時計とのギャップが、何度見てもエロい。
 こんなの着けたまま抱き付かれたら、ゴチンと痛そうだな……と、ちょっと思う。けど、「外せ」なんて言う余裕がねぇ。

 優しげに整った顔が、オレを上目遣いに見つめてる。まつ毛が扇のように長ぇ。
 唇の薄い大きな口から、赤い舌がちらちらと覗いた。
「声、聞かせろよ」
 囁きながら、オレは抜き差しを速くする。
 荒くなる呼吸。もっていかれそうになるくらいの快感。でも、意地でもオレから喘ぎ声なんか出さねぇ。
 オレの快感より、まずレンを善くさせてぇ。
 どの雑誌にも載ってねぇ、誰にも見せてねぇ顔が欲しい。
 声が、欲しい。

「レン……!」
 細腰を掴んで、引き寄せる。
 細長い脚を割り開き、深く深く、繋がって揺する。
 ふわりと匂い立つ甘い香り。
 主導権握ってんのはオレなのに、目の前のレンは何か余裕で。挑戦的な目でこっちを見つめてて。
「くそ、てめっ」
 オレばっか余裕ねぇみてーで、ちょっと焦る。なあ、善くねーの?
 別に、演技っぽい啼き声なんか訊きたい訳じゃねーけど。でも、黙ってられんのもシャクだ。
 啼かせてぇ!

 ぐいっと深く刺し貫くと、薄い唇をわななかせ、レンがふっと目を閉じた。
 でも、可愛いなと思ったのも一瞬で。ふと見ればレンはオレじゃなく、手首の時計にキスしてる。
 おいおい、キスの相手が違ぇーだろ?
 時計ハメた左手を掴み、ぐいっとシーツに縫いとめると、その瞬間レンがオレに囁いた。
『阿部くん……』
 掠れたようなエロい声。ズクンと腰がうずく。
「くっ」
 奥歯を噛み締めても、込み上げたモノはやり過ごせない。

 そして、オレは――。

「はっ……」
 射精して、解放感と共に目が覚めた。やや遅れて倦怠感がオレを襲う。
 うつ伏せで寝てるオレの下には、シワの寄ったシーツだけ。
「えっ……?」
 慌てて隣を探すけど、誰もいねぇ。
「レン!?」
 起き上がり、布団から抜け出そうとして、べったりと肌に貼り付く下着に気付く。

 なんだ、これ? いや、分かってるけど、分かりたくねぇ。
 レンは? そう思って部屋の中見回しても、当然だけどアイツはいねぇ。つーか、いる訳がねぇ。
 ゆっくりと夢の残滓が剥がれていく。

「あー……くそ、夢か」
 声に出して天井を仰ぐ。
 今すぐ寝なおしたら、続きが見れんじゃねーかとも思うけど、汚れた下半身事情が、二度寝を許してくれなかった。
 枕元には、ちょっと古ぼけて来た雑誌。
 いや、そういうエロい本じゃなくて、普通の野球雑誌だけど。ただその裏表紙の広告には、さっき夢で見た色白の男が写ってた。
 ぴっちりと筋肉のついた、白い裸身。腕時計のハマった手で髪を掻き上げ、挑戦的な目でこっちを見てる。
 何度見てもエロい。

 しみじみと眺めて、もっかい深くため息をつく。
 なんで夢の中で気付かねーかな? 我ながらダセェ。夢で組み敷いてたレンは、まんまこの写真のレンだったのに……。

 オレは重い気分を引きずりながら、脱衣所に向かって服を脱いだ。
 下着もパジャマ代わりのスウェットも脱ぎ捨て、バサッと洗濯機に放り込む。
 昔は、ちょっと水洗いしてからじゃねーと気持ち悪ぃ気がしてたけど、最近はどうでもよくなった。それより、自分の恋路の方が気になった。

 オレが夢で抱いてたのは、「レン」っていう名のメンズモデルだ。
 読者モデルじゃなくてプロのモデルで、高級ブランドの専属もやってる。時計やスマホのCMにも出るし、女性誌で特集されてたりもする。
 男のオレらから見てもエロいアイツは、女からも「色っぽい」とか「かわいカッコイイ」とか言われて、ちょっと人気あるらしい。
 つっても、変装無しで街を歩いてたって、きゃあきゃあ言われたりはしねーけど。

 そんなレンとオレとは……まあ、夢で見てたような関係じゃねぇ。
 けど、少なくともオレの片想いって訳じゃねぇとは思ってる。だって、「誘いたいから」つってメアド訊いて来たの、向こうからだし。
 以来数カ月、交わしたメールは数十通。
 オレのバイト先でたまに会ったし、デートだって1回した。映画の試写会に一緒に行って、帰りにレストランでメシ食っただけだけど、デートはデートだ。
 別れ際に抱き締めて2回目のキスしてやったけど、嫌がらなかったし。むしろ真っ赤になってたし。
 全部アイツの奢りだったっつーのが……まあ、オレとしちゃ不満だったけど。

 夢の中身を思い出して、はあ、と深いため息をつく。
 サルじゃねーんだから、付き合ってすぐに寝たいとか、そういうんじゃねーけど。やっぱ、率直に言うと、ヤリてーなとは思ってる。
 付き合って数ヶ月で、まだキス、しかも2回ってどうなんだって気もするけど、そもそも会えねーんだから仕方ねぇ。
 モデルは……っつーか、社会人は忙しい。

 9月は春夏コレクションがどうとか、ついでに撮影がどうとか言って、ほとんど日本にいなかった。いや、たまにメール貰ってたから、不満とかじゃねーけど。
 10月・11月はオーディションとかレッスンとか、撮影とか取材とか、とにかくやっぱ忙しそうにしてた。
 12月には、もう次の春夏コレクションの日程が決まったとか聞いた。
 誕生日に熱い夜を過ごすなんて、当然だけど無理な話で。クリスマスはクリスマスで、今度はオレのバイトが忙しかった。

 そんで、1月――。
 モデル様は今、来季の秋冬コレクションに出るとやらで、正月もそこそこにヨーロッパに行ったきりだ。
 応援してやろうと思うのに、アイツの多忙振りを素直に喜べねーのが情けねぇ。
 現状がちょっと辛かった。

(続く)

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あきゅろす。
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