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小説 3
続・禁断の関係・6 (にょた・完結・R18)
 散々胸を揉まれた後は、四つん這いにされて脚を開かされた。
 抵抗するつもりなんてないけど、その暇もない。腰を掴まれ、そのままぐぐっと貫かれる。
 彼のカタチを覚え込まされた穴は、まだぐっしょり濡れていたけど、それでもすんなり入る訳じゃない。
「あっ……ふ」
 小さな悲鳴を上げると、ふふっと笑われ、背筋をべろっと舐め上げられた。
「インラン」
 楽しそうに、彼が言った。
「こんなインランな体して、お前、この先どうすんの?」

 どうするの、って、どういう意味?

 訊くよりも早く、律動が始まる。
「んっ、んっ、この、先……?」
 揺さぶられながら上ずった声で訊くと、彼は動きを緩めもしないで、残酷に答えた。
「オレと終わった後、だよっ」
「あああっ」
 ぐりっと奥を突かれて、たまらずシーツを掻く。
 彼のセリフが理解できない。
「オレとしなくなったら、体持て余すんじゃねぇ?」
 って。

 しなくなったら? 終わった後?
「お兄、ちゃん、っ……」
 また私を突き放すの? イヤがって泣いて縋るの、見て楽しいの?
 私はいつまで「捨てないで」って、彼に頼まなきゃいけないの……?

「終わり、ヤダ。や、やあ……っ」
 訴えても返事は無い。
 ただ、揺らされる。激しく。固く大きいモノに体の内側をこすられて、気持ち良さに沈められる。
 寂しい心を置き去りにして、好きしか残して貰えなくて、私は泣きながら、啼きながら、「終わらねーよ」って言って貰えるのを待った。

 彼がどんな顔で私を抱いてるのかは、確かめることができなかった。


 ホテルを出ると、もう陽が暮れて、辺りは真っ暗になっていた。
 ドライブに出掛けたハズなのに、結局あの量販店とラブホテルにしか行ってない。
「メシ食いにいくか?」
 そう誘ってくれるのは、彼なりに悪いと思ってるから、なのか、な?
「ステーキ、がいい、なっ」
 前に行ったファミレスを思い出してそう言うと、「肉食だな」って笑われた。
「オレは草食な子の方が好きだなー」
 そんなイジワルに気の利いた反論もできなくて、私は運転席の彼をちらちら眺めた。
 夜の運転席は、いろんな機器が淡く光って、慣れたようにそれらを操る彼の横顔は、いつもより格好よく見える。
 ずっと前を見つめる彼と、そんな彼を見つめる私。いつもそうだなぁと思うと、ほんのちょっと寂しくなった。

 てっきりファミレスに行くんだと思ったのに、彼が車を止めたのは新都心近くのシティーホテルだった。
 いつものラブホとは違う、きらびやかなエントランスを抜けてエレベーターに乗り込む。
 場違いな気がして身を竦めてる私をよそに、彼は私の肩をゆるく抱いて、6階のレストランに堂々と入った。
 ステーキを食べたいとは言ったけど、フルコースだとは思わなかった。せっかくの『シェフのおすすめ』だったのに……緊張して味もよく分からなかった。

「な、なんで、こんなトコ……?」
 恐る恐る訊くと、思った通り意地悪を言われた。
「さーな。最後かもだからかな」
 最後だ、と、そう言われるのは初めてじゃない。でも、何度言われたって慣れないし、悲しいし、イヤだ。
 グサッとくる。
 私が何も答えないでいると、彼もそれ以上は何も言ってくれなくて、フォローもなくて、そのまま車に乗せられた。

 ただ、シートベルトをはめた後で、一回だけちゅってキスされた。
 何度も何度も私を突き放す、その力は絶妙にゆるくて。そのくせ私が立ち止まると、気まぐれみたいに触れて来る。ズルイ人。
 そのズルさに時々泣かされながら、それでも好きをやめられないんだから、私もホント、バカだ。

 家に着いたのは、夜の10時少し前。
「あり、がと」
 車を降りる前に礼を言うと、目の前に昼間買った、あのグロテスクなモノが差し出された。
「なっ!?」
 慌ててそれを押し返し、家の玄関の方を見る。父や母が出て来てたら、一体どうしたんだろう?
 でも幸い、明かりの点いた玄関口は閉じたままだ。人影もない。

 ホッとしつつ、咎めるように彼を見ると、ふふっと笑われた。
「オレがいねーと、寂しーだろ? だから、穴埋め」
 そう言われて、ぐいっと手に押し付けられて……どうすればいい?
「あれ、受けとってくんねーの?」
 って、機嫌を損ねたみたいに、顔をしかめて言われたら?

 カバンの奥底にそれを隠した私は、隣の彼の腕を引いた。
 これで最後じゃないよね、って、確かめたいのに訊けない。
 突き放されるのはいつものことなのに、泉君のコト、ディナーのコト、オモチャのコト……色々一度に重なり過ぎて、訳もなく不安になる。
 縋り付く私の指をやんわりと放して、彼は端正な目元を細め、優しく笑った。
 そして言った。

「こんな男はやめとけよ」

 それは――泉君のメールの中身と、ほぼ同じ言葉、で。
 それっきり何も言って貰えないまま、私は車から降ろされ、玄関前まで連れて行かれた。
 母との挨拶もそこそこに、私を置き去りにして立ち去って行く真っ直ぐな背中。
 いつもと同じやり取りのハズなのに、何だかホントに最後な気がして、泣けて泣けて仕方なかった。


 私を散々不安にさせて、彼が次に連絡をくれたのは……クリスマスイブの前の夜。
――明日デートしようか?――
 って。
 断ったら、ホントに最後にしてしまうくせに、ズルイ人。
 でも、好きで。どうしようもなくて。
 その日は泉君たち野球部の皆と、小さなパーティーをする予定だったけど、私は「行く」と即行で返事した。

 断るなんて選択肢はない。
 祝福されないのは分かってる。
 けど友達より、家族より、自分よりも――この禁断の関係の方が、今の私には大事だった。

  (完)
※2013VD記念そう禁断でもない関係 に続きます。

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あきゅろす。
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