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アフター・中編 (R18)
カラッと引き戸を開けて、昨日と同じ渋い浴衣姿の阿部さんが戻って来た。
阿部さんはぐるっとオレの部屋を見回して、「おし、来てねーな」って満足そうに笑ってる。
「は、早かったです、ね」
ちょっとビックリしてそう言ったら、「ああ」って当たり前のように言われた。
「オレがいねー間に、他の男連れ込んでんじゃねーかって、気が気じゃなかったかんな」
「ほっ……」
他の男って、修ちゃんのこと、かな?
「あ、でもオレ、今日は夜通し……っ」
修ちゃんと語りたいんですけど、とは、言えなかった。
カチカチ、と紐を引かれて照明が消され、黒いシルエットに押し倒された。
「あっ」
思わず悲鳴を上げた口を、湿った生温かいモノで塞がれる。
まだちょっとアルコールの混ざる息。
気のせいか、彼の舌がいつもより熱い。
荒い浴衣の生地が触れて、あの格好イイ浴衣姿、もっと見たかったなぁって思う。
「声出しても、オレはいーけど」
耳元で、阿部さんが意地悪く囁いた。と同時に、耳の側を舐められる。
こめかみ、耳たぶ、穴の中……。
ぞわっと快感が走って、「んっ」と声を上げそうになって慌てた。出してもいいって言われたって、ここ、じーちゃんの家だし。変な声出せないよね。
引き戸だし。鍵、かからないし――。
なのに阿部さんは、構わずオレのシャツをぐいっと引いて、強引に脱がせてしまった。
うそっ、って思う間もなく、ズボンも下着ごと脱がされる。
えっ、阿部さん、酔ってる? ここがどこか、場所、分かってる? 鍵かからないの分かってるよね?
「阿部さんっ……」
オレは小声で彼の名を呼んだ。
薄暗闇の中、阿部さんの顔はハッキリ見えない。でも、機嫌良さそうなのは雰囲気で分かる。
手が温かい。
阿部さんは低い声で「んー?」って訊きながら、オレの全身をまさぐってる。
手が、唇が、舌が、好き勝手にオレの上を這いまわる。
「だ、めっ」
声を殺して言ってみたけど、全く止めてくれそうにない。
さっきまで、修ちゃん来て欲しいなって思ってたけど……今は逆に、来ないでって祈るしかない。
「ダメじゃねーよ。昨日、約束したろ?」
阿部さんが、くくっと笑いながら言った。
昨日――そりゃ、どんな約束したのか覚えてる、けど。
試合終わったら覚悟しとけ、って。
「で、でも……んっ!」
反論しようとしたけど、半勃ちだった陰茎をいきなりしゃぶられて、喘ぎかけて、慌てて手で口をふさいだ。
「でもじゃねーよ」
阿部さんが喋る度、口の中に入れられてるオレのに、歯や舌が軽く当たる。
おまけにちゅうっと強く吸われて、でも声を我慢しなきゃいけなくて、オレはすぐに、喋るどころじゃなくなっちゃった。
喘ぎ声を必死に我慢しようと閉じてる口に、阿部さんの指が差し込まれる。
太くて長くて、でも整ってる指。
今から何されようとしてるか、勿論分かってて、でも逆らえなくて、その指にたっぷりと唾液を絡ませる。
「ヤじゃねーんだろ?」
喉をゴロゴロ鳴らすような、低く掠れた色っぽい声。ゾクゾクして、ぴくっと腰が跳ねる。
そりゃ、ヤじゃない、けど。
でも、ここはじーちゃんちで。鍵かからなくて。
……修ちゃんが来てくれるかも知れない、のに。話したかったの、に。
でも、そうだ、「来て」って言ってないんだから、来ないかも知れない。
阿部さん一緒だし。
もう修ちゃん、来ない、よね?
オレの唾液で濡れた指が、そっと脚の間の穴を撫でた。
「んっ」
焦らすようにくるくると撫でられて、無意識に腰が浮く。指を迎え入れるみたいに。
阿部さんが、ふふっと微かに笑うのを聞く。
指が一本だけ挿れられた。
それが2本、3本と増やされ、入り口を広げるみたいにバラバラと動く頃……オレはもう、すっかり息が上がっちゃってて、ぐったりと布団に沈んでいた。
必死に声を殺したからかな? 酸素が足りなくて、ぼうっとする。
目を閉じて寝転がってたら、オレにもスキンが被された。
今までそんなコトしなかったからビックリしたけど、でも、そうか、じーちゃんの家だもんね。
シーツとか浴衣とか、汚せないもんね。
でも、その割に阿部さんはあの浴衣を着込んだままだ。
腰を掴んで引き寄せられた時、糊の効いた生地に引っかかれた。
ゆっくりと彼に貫かれながら、浴衣を着た背に手を這わす。
「んーっ」
深くキスされて、唇で唇を封じられても、必死で我慢しようとしても、どうしようもなく漏れる声。
ゆっくりゆっくり、阿部さんの固く太いモノが、体の中に入って来る。
こんなにゆっくりにされたの、もしかして初めての時以来かも?
その後も、阿部さんはゆっくり、ゆっくりゆっくり腰を動かした。
激しく抱かれるのも嬉しいけど、ゆっくりこすられるとすぐに溶けそうになって、身もだえするくらい気持ちいい。
阿部さんはずっとオレにキスしたまま、ゆっくりゆっくり、オレを優しく揺さぶった。
けど――。
阿部さんの腰に、たまらず両足を絡めた時。
ミシッ。
廊下に、足音が響いた。
(続く)
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