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Season企画小説
ハワイアナ・4 (R18)
 オレが現役として野球をやってたのは、中学1年から大学3年までの9年間だった。
 当時は、野球部の中で体力も持久力もある方だったし、アナウンサーやってく上では、役に立ってる。「体力あるなぁ」なんて褒められることもある。
 けど、やっぱ現役プロ野球選手にはかなわない。
 年末の自主トレ密着取材の中で、オレも撮影スタッフも、そのすごさを間近でじっくり見せられた。
 砂浜を連続で何本もダッシュしたり、ホテルから練習場への行き返りもジョギングしたり。その上で、フリーバッティングやノック練習なんかもこなすんだから、尊敬だ。
 勿論、練習場にばっか閉じこもってる訳じゃない。
 スポーツジムで汗を流したり、ゴルフ場に出かけたりもした。
 ゴルフコースに出るのも、思ったより運動になるんだなって、初めて知った。
 オレや撮影スタッフが、ゼイゼイ言いながらついてってるのに、阿部さんたちプロ選手は、雑談しながら余裕の顔で歩いてる。鍛え方が、根本的に違うんだなって分かった。

 阿部さんの素晴らしい体力は、ベッドの上でも健在だった。体力もすごいけど、筋力もすごい。
 自主トレで体を動かしてるのに、疲れなんて全然溜まってないみたい。鍛え上げた肉体を駆使して、連夜オレを啼かせまくった。
 そりゃオレだって、ハワイに誘われたとき、そういうことも期待した。
「三橋はオレんとこ泊まれ」
 1日目の取材の後、一方的にそう言って、高級ホテルに連れて行かれたのだって、嬉しかったしそわそわした。
 部屋に2人きりになった途端、有無も言わさず服を脱がされ、ベッドに放り投げられたときも、「待って、待って」とは言ったけど、イヤじゃなかった。
 恋人に求められるのは、やっぱ嬉しい。
 たくましい体に組み伏せられ、腕の中に閉じ込められると、ドキドキが止まらない。
 阿部さんが大好きだし、阿部さんに抱かれるのも好き、だ。
 けど――さすがに、手加減はして欲しい。

 阿部さんが動くたび、ギシギシ悲鳴を上げるベッド。
 オレがドスンと座ったくらいじゃビクともしないスプリングが、阿部さんのパワーを受けてミシミシ鳴る。
 視界がぶれるくらいの揺さぶりは、オレの身体も思考も滅茶苦茶に揺さぶって、たちまち何も考えらんなくさせられる。
 性急な前戯だったのに、問題なく感じてるのは、シャンパンと雰囲気に酔ったせいかも。
 強い腕に抱き竦められ、容赦ない快感の渦に溺れる。
「あっ、やあっ、激、しいっ」
 悲鳴を上げて訴えても、「好きだろ」って言われて、許しては貰えない。実際好きだから、首を振っても説得力はない、けど、それでも限度ってあると思う。
「手、加減っ、んんうっ」
 啼きながら頼んでも、「してるぞ」って楽しそうに告げられて、胸にちゅうっと吸い付かれた。

 心肺機能が、きっとオレとは桁違いなんだろう。
 ハワイに来るまで、まだ数える程しか会ってなかったから知らなかった。
 ビデオカメラ片手に、「どうして欲しい?」なんて卑猥なセリフ言わせて楽しんでた阿部さんは、ものすっごく手加減してくれてたみたい。
 オレの痴態を映像に残すのが最優先だったから、欲望のまま突っ走るなんてなかったんだって。
 その事実を知ったのは、阿部さんが用意してたSDカードを全部使い切っちゃった後のことで――。
 ビデオ撮影っていう目的を失くした阿部さんは、セックスに100%集中することになって、同時に手加減しなくなった。
 どういう映像が何時間分、ムダに高画質で撮られたかっていうのは、あんま思い出したくない。
 卑猥な言葉を言わされるのには困ってたけど、喋れなくなるくらい激しく強く抱かれるのも困る。
「あっ、ああっ、んっ、ああっ……」
 どんどん激しくなるリズムに、翻弄されて声を上げる。
 甘さを剥ぎ取られた嬌声は、悲鳴にも似て、止まらない。

 嵐の海の小舟みたいに、がくがく絶え間なく揺すられる体。喘ぎ声はとうにひしゃげて、オスを誘うメス猫みたいだって、自分でも思った。
 広い背中に回した腕が、汗と衝撃に滑り落ちる。
 しがみつく力がどんどん失せて、もうダメだって何度も思った。
 組み伏せられ、揺さぶられて喘ぎ啼いてるだけなのに、なんでこんな、息も絶え絶えになるんだろう?
 体力が続かない。酸素が足りない。
 阿部さんは、年が明けても容赦ない。
 カメラ無しで抱かれた初日、あまりの激しさと豹変ぶりに、怒ってんのかって最初は怯えた。
 けど、そういう訳じゃなかったみたい。突き上げは激しいのに、髪を撫でる手は優しくて、「三橋」ってオレを呼ぶ声も優しかった。
 それまでだって、カメラを放り出して強く抱かれることはあったけど、最初から最後まで容赦ないなんてことはなくて、だから知らないだけだった。

「あっ、……っ、阿部さん……」
 声を張り上げるだけの力もなくて、上ずった善がり声が漏れる。
 対する阿部さんは、まだまだ余裕でちょっと悔しい。
 どんなに動いても、ベッドの上で暴れても、疲れを感じさせないアスリートの体力。汗をかいた顔は息を荒くしてても精悍で、男の色気に溢れてる。
「三橋、好きだ、好きだ」
 興奮を隠さず、耳元で囁かれると幸せでどうにかなりそうになる。
 気持ちイイ、激しい、大好き、苦しい……。激しく愛され、唇を奪われ、息継ぎもうまくできない。
 目を閉じたまぶたの裏に、無数の花火が打ち上がる。

 オレも好き――。そんな言葉を、言えたかどうか分かんない。もう唇を動かすだけの力はなくて。
 新年最初のセックスは、そんな風に終わった。

(続く)

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