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セイレーンの恋/完結
新月の夜
満月の狩りから月が巡り新月の夜になるとセイレーン達はコロニーから出ず、ただただ新しい兄弟の誕生を待ちわびていた。


丁度10月が巡るのを終えた繭が孵化するのを約50名ばかりのセイレーン達が息をのみ、見守っていた。


マザーの胸元に浮かんでいた一際大きな繭が地面にゆっくり降りてゆき、糸がほどけるように二つの小さな影となった。

新しい群れの一員が増えた瞬間にコロニーの皆は喜びの歌を歌い続けた。

その夜生まれた者はまだ名もつけられないまま、小さな体で喜びの歌を歌い始めた。

これがセイレーンの雌の始まりであり歌えなかったもう一匹はセイレーンの雄と成長する。


そしてここに新たな対が誕生した。
ある程度育つまでは年老いた者がセイレーンとしての狩りの方法や生き方を教える。
そういうしきたりがあった。




誕生の歌を歌っていたオリンピアもふと初めてこの世に生まれ落ちた日のことを思い出した。
あのときは確か楽しくて、嬉しくて…思わず歌ってしまった気がする。

そしてここからオリンピアとホフマンが別の人格として生き始めた…


そのことをふと思い出し、オリンピアは隠れて一筋の涙を流した。



月が巡ればまた狩りが始まる。

あのときの船員に出会えた時、私はどうすればいいのか!ただ悶々と考えながら日々を過ごしていった。


「人魚姫なら…泡となって消え失せるのよね…」
そうつぶやき、星空をぼんやりと、見つめていた

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あきゅろす。
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