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セイレーンの恋/完結
解体作業
雌セイレーン達が船に向かっている最中、いつものように雄セイレーン達の「解体」作業が始まっていた。

「アムレード!そっちはどうだ?」

黒髪の雄セイレーンが声を張り上げる。長い髪をブレイズにあみこんで髭を貯えた、いかにも年長者のような風貌をしている。

今回と指揮、アイーダの対の雄のようだった。

「ラダメスさんこっちは大体片付きましたよ。どうもこの船、海賊船のようですよ」

雌のように長い金髪を潮風にたなびかせ、血の付いた翼の鉤爪を一舐めした。

「たしかにこりゃーマザーの喜びそうな宝石が沢山積んであるねぇ。
持って帰るには俺達だけじゃ何往復すればいいんだか。ははははは」

と、暗緑色をしたホフマン。

「雌達もこちらに向かってるようだ。早く解体を終わらせてマザーの元に帰還しよう。」

『了解』

四匹の雄達は作業を続けた。

「しっかし。傭兵とか魔術士が居なくて善かったスよねー。ホントこんな収穫久しぶりじゃないスか?」

一番若い細身のアルフレードが袋に「肉」を詰めながらうれしそうに言った

「たしかにその通りだねー。久しぶりにホフマンのペアが出たのもでかいだろうしなー。
なぁ。ホフマン。オリンピアの奴最近狩りに出たがらなかったじゃないか。ヒトが気になるとか言ってさ。」

「あぁ…言ってたよ。対だから分かるが正直俺もヒトは気になってはいるんだよねぇ。ははは」

「まったく。ホフマンはなんでいつも笑って誤魔化すかねぇ。」

ぶつくさ言いながらもアムレードも肉と宝石を分けて袋に詰め始めた。


セイレーンは魔術にも長けた魔獣のため、作業をする最にはヒトのような手に変化させることができる。
最も、作業をしているセイレーンを見るのはセイレーンしか居ないだろうが。

器用に三本の鉤爪のついた指で、さくさく作業をすすめていく。


大型船だけあってなかなか「肉」の量も多く、収穫も上々だった。 


ちょうど雄達が作業をあらかた終えた頃、雌達が到達した。

「ラダメス。状況はどうだった?」
とアイーダ。

「状況もなにも。オリンピアの歌声の前には大型船も一発だよ。皆気持ち良く寝てて作業は楽だったさ。
それにほら。」

宝石の袋を見た瞬間、雌達は歓声をあげて喜んだ。

「綿を積んだ船を襲った海賊船だったってわけね。いい収穫だったわね。早くコロニーに帰りましょう!」と、オフィーリア。 


「わーい!きょうは美味しお肉食べれるね!
アルフレードも、いっぱい食べてはやくガリガリなのなおしてよねー。」

カメリアが嬉々として袋を足の爪でつかみながら、飛び立った。


(よかった。ワタシ達が襲った船にはあのヒトは居なかった!)

オリンピアは安心し、そして『肉』の入った袋を足で掴み潮風に乗りコロニーへと飛び立った。




「なぁ…ラダメス。前、オリンピアが魔術士に捕まりかけたこと、あっただろ。」

「あぁ…五回前の狩りのことか…」

最後の肉をつめてホフマンがラダメスに告げた

「対だから分かるんだけどよ。あいつ、ホントおかしいんだ。今回も俺の眼を通してあの船員が居ないか探してたんだ。」

他のセイレーン達がコロニーに向かって飛び立ち、甲板にはラダメスとホフマンだけになっていた。

朝日が登りはじめ、薄い日差しが海面を照らし始め、波間がきらきらと輝きはじめた。

「あの船員、早く見つけて殺さねえと…コロニーにとって損害になりかなねねぇ。
感謝こそしてるが流石にオリンピアが狩りに出たがらないのだけは困るからよ…」
ホフマンが呟く。

「確かに。お前達のペアは狩りには必要だしな
しかし…何の気紛れであの船員はオリンピアを助けたんだろうな。ヒトのやる事はさっぱり理解できん」

「ほんと。そうおもうぜ。さてと。俺達も帰りますかね。もう夜が明けちまった」


そう、二匹の影が船より離れ海風に乗りながらコロニーへと帰っていった。


残ったのははらわたの無い死体ばかりの血に塗れた海賊船だけが虚しく海を漂っていた


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あきゅろす。
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