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セイレーンの恋/完結
狩り
岩場には数匹の雌のセイレーン達が集まっていた。

皆色とりどりの羽を潮風になびかせ笑いあっている

短髪の最も幼い雌がオリンピアに気付いたようだ

「オリンピア姉さんーもうおそーい!」

「ごめんなさい。でもまだ船は来てないんでしょう?」

オリンピアは岩場に降り立つと二、三度翼をはばたかせ翼を折り畳んだ。

「でーもー。」

幼いセイレーンは少し膨れっつらで不満そうだ。

今回の狩りに出るセイレーンは4組。他の組はまた別の場所で狩りを行っているようだ。

最近はマザーが子を生む時期であり、沢山の食糧が必要なため大掛かりな狩りがつづいている。
ヒト側もかなり警戒しているようだ。

「カメリア、アイーダ、オフィーリア。何か船の情報は聞いてる?」

アイーダと呼ばれた紺色の肌をした長い黒髪を一つに纏めた女が答えた

「綿を運んでる船がこの岩礁付近を通ってサヴェジ港に向かうらしいとだけは聞いている。
オフィーリアがヒトの振りをして酒場で船員に聞いたようだから確かな話だろう。」

「相変わらず。ヒトのフリうまいもんね。オフィーリア姉さん。いいなぁ。ワタシも酒場いってみたい!」
そう無邪気に笑うのは短髪のまだ年若きカメリアだった。

蜂蜜のような色をした髪の毛をなびかせたセイレーン、オフィーリアが言う

「そんないいもんじゃないわよ。ヒトのフリなんて。あいつら汚らしいったらありゃしない!
オリンピアもヒトのフリ上手いじゃない。今度の偵察換わってよ。」

談笑は、大きな波音にかき消され、セイレーン達の目付きが獣の者と換わった


――――――船だ。

綿を運ぶにしてはあまりに大きかった。
情報が誤っていたのか…
いや、綿も運んでいるだろうが別の物も運んでいるのだろう。 


「アイーダ。今回の指揮はあなたよね。どう唄う?」
オリンピアは鋭い目付きでまだ遠い船を見つめた

「幸い風は私たちの背より吹いている。四人で唄えば船も止まるだろう。
オリンピアの歌声で止まらない船等無い。そうだろう?」

アイーダはくすりと笑いオリンピアを見つめた。
実質、チームで最も高い歌声を持つ者だったからだ。

「でも…もう少し近づかないと唄も届かないでしょうね。」

とオフィーリア。

「じゃぁじゃぁ!練習?練習?」

「カメリア。今回の船は予想外の物なのよ。前の小さい船みたいに全員簡単に眠ると決まったものじゃないわ。魔力もつかうでしょう。」

オリンピアにたしなめられ、カメリアはまた膨れた。
歌声や魔力は一人前だがまだまだ幼い。
雛と成体の間頃の年頃だから仕方がなかいか。
とオリンピアは若いカメリアを見つめた。



徐々に近づいてくる船の影に発声をしながら、セイレーン達は唄うチャンスをうかがった。


もう一度大きな波音。
そして、アイーダが羽を振り上、そして降ろした。
唄う合図だ。

四人のセイレーンの合唱が海辺をこだまする。

波音のような子守歌。

そして―――――

船は止まった。
それから後は雄の仕事だが、これだけの船だ。
かかっていない人間もいるだろうとアイーダは雌達を率いて船へと飛び立った 


オリンピアは胸中で願う。(あの…あの船員がのってませんよう…)



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あきゅろす。
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