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Novel
運命の軋む音 T
その日の仕事と勉強を終えた昼下がり。

マリオンは走っていた。

ふわふわの金髪が風になびき、澄んだ泉の色をした瞳はきらきらと輝く。

硬いブーツが昨夜の雨で柔らかく湿る大地を踏む。

目指すのは王宮の裏に広がる深い森。
その中に埋もれるように在る、朽ちた石造りの神殿である。


「こんにちは、いい天気だね」


崩れた礼拝堂の壁の隙間から、中へと滑り込む。
7歳にしては小柄なマリオンでもやっと通れるかという大きさである。

頭上には小鳥が作った巣がある。
雛たちの鳴き声に惹かれ、この入り口を見つけてから一年。

新たな主となったその時の雛とその子供たちに笑いかけて、さらに奥を目指す。


もう夏になるというのに室内はひんやりと涼しい。

この森には強大な力を持つ竜王が住み、王宮を影から守護しているという言い伝えがある。

だが、マリオンは知っている。
居ると言われているのではなく、居るのだと。

そのことを告げたら、彼の主は軽く目を瞠り、「誰にも言っちゃだめだよ。男同士の約束だ」とにこりと笑んだ。

鮮やかなステンドグラスに、巌のように重厚で咲き誇る花のように優美な姿を見出し、慌てて叫ぶ。


「ごめんなさい。遅くなりましたっ」


荒い息を整えながら、ぺこりと頭を下げ、言葉を搾り出した少年に、長大な時を生きる竜の長老は暖かい視線を向けた。

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あきゅろす。
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