Novel
運命の軋む音 W
おちる。落ちる。堕ちる…
世界が自分を吸い寄せていく。
引力に逆らえるものはこの世に存在しない。
鳥や雲の水滴だって、永遠に抗い続けることはできないのだ。
そんな今更ながらの事実が走馬灯のように脳内を廻る。
今まで直面したことが無かったからだが、「死」というものにこれほど恐怖を抱いたのは初めてのことだった。
眼前に突きつけられた絶対の終わり。
誰でも良いから助けてほしいと叫んだ。
自分は今死ぬわけにはいかないのだ、と。
愛も絶望も知らぬまま、人生を終わりにしたくはない。
しかしそう想いながら亡くなっていった人々が、いったい何人いることだろう。
堅く目を閉じた。
涙が溢れた。
『仕方がない。特別だよ』という言葉とともに、ばさりと羽音が聞こえたような気がした。
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