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側に居て【赤葦】

「名前、こっち来て」

部屋の隅でケータイを弄っていた君が不意に私を呼ぶ。

「?なに?」

持っていた京治の漫画をベッドに置き、四つん這いで近づく。

すると京治はいきなり立ち上がったかと思うと私をその大きな腕で抱き締めた。
筋肉の付いた腕は私のそれとは比べ物にならないくらいがっしりとしていて安心感を感じた。

「…………京治?」

京治の胸に押し付けられていた顔を恐る恐る上げてゆっくり話し掛ける。

「…………」

もう付き合い始めてから2年位は経つけど京治はこういう事を滅多にしない。

こういう事をしてくるのは大抵……

「………名前………疲れた」

普段は弱音なんて吐かない京治が、本当に疲れた時。

おそらく連日の部活による肉体的疲労と、木兎さんの世話による精神的負担か。

多分今日はそのどっちも重なっているんだろう。

「…京治、お疲れ様」

「ん…」

あまり詮索してもきっと京治は余計に疲れてしまう。
こういう時はそっと「お疲れ様」を伝えるのが一番良い方法なのだとこの2年間で学んだ。

そうすると京治はしばらく私を抱き締めた後に「ありがとう」と言って小さく笑ってくれる。

ぎこちない手付きで頭を撫でてくれる、その表情が好き。
優しい、優しい京治の顔。

「京治」

「ん?」

「好き…だからね」

なんとなく。本当になんとなく伝えたくなって言った言葉。

京治はふわっと小さく微笑むと

「知ってる。俺もだから」

とまた私を引き寄せた。



君が苦しい時は、一緒に分け合おう。
私に出来ることはこれくらいしかないけど、君が大好きだから。
だから、これからも……








いつもありがとう。俺は名前のおかげでバレー出来て、毎日過ごしていけるから。
これからも、ずっと………





一番側に居て下さい









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