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目が合えば【影山】

穏やかな昼下がり。
暖かな日差しが差す窓辺の席で私は微睡んでいた。
特に何をするでもなくボーっと外の景色を眺める。

あ、風が気持ちいい。

7月にしては爽やかな天候で過ごしやすい気温の今日は
なんともやる気が起きない。

ああ、このまま眠ってしまおうか、と両腕に顔を
埋めかけた時



「おいコラ日向ボゲイィィィィイィ!!!!!!!!」




怒鳴り声が窓の外から聞こえてきた。


どきっ


心臓が大袈裟な音を立てて跳ねる。


ドキドキとうるさいのはびっくりしたから?

…………いや、違う。

窓から首を出して下を見る。

オレンジのふわふわとさらさらの黒髪がすごい勢いで走っているのが見える。



また今日もやってる。


もうこの光景は日常茶飯事になっている。

違うクラスの日向くんと同じクラスの影山くん。

今の状況からは想像もつかないけど2人はバレー部で活躍していると耳にする。

仲が良いのか悪いのか、毎日毎日怒鳴り声と共に全力疾走しているんだよね。


あんな風にすごい形相で走ってる影山くんは女子からちょっとかっこいい、なんて噂されてる。

背が高くて、クールでカッコ良くて。

その噂話に参加した事は無い。けど正直私もそう思う。

だから毎日、走っているあなたの姿を見つめている訳で。
心臓なんか、ドキドキさせちゃってる訳で。


そのまま2人が走り回っているところを見ていたら予鈴が鳴った。

ああ、また今日のこの時間が終わっちゃった。

同じクラスに影山くんがいてもまともに会話したことのない私はこのお昼だけが影山くんを見つめられる時間だから。

ちょっと虚しい気持ちになる。


せめてあとちょっとでも。

昇降口に向かう影山くんを名残惜しく思いながら見つめる。

すると不意に影山くんが上を見た。



…………目が、合った。



え!?
どうしよう!?私が影山くんを見てたのがバレちゃう。
怪しく思われたかな………
気持ち悪い奴って思われる!!!
そしたら教室でも気まずくなっちゃうし、え、どうしよう!!

一気にパニックに陥る私の頭。
考えるのは「どうしよう」だけで、もうそれ以外に頭が回らない。

時間が止まったかと思う位長い長い時間が私の中で過ぎた。

気付けば私は影山くんをぼーっと見ていて。

なにかしなきゃ………!


考えた私はおずおずと首を動かして会釈した。

顔を上げながらそのまま影山くんをチラッと見る。



すると影山くんも小さく、本当に小さく会釈をした。

その表情はいつも私が見ていたものよりも幾分か柔らかく見えて。

どきっとまた胸が高鳴る。


初めて見た、影山くんの優しい顔。

影山くんがスタスタと歩いて行ってしまっても、私はまだ窓の外を見てさっきの顔を思い出しては一人でにやけるのを必死に我慢していたのであった。










「うわ、影山なにその微妙な顔!!にやけてんの?それとも笑顔か!?どっちにしろ気持ちわりー!!」

「はっ!?うるせーボゲ!!!!おめーに言われたくねーんだよ!!」







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あきゅろす。
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