捜索二日目(1)
その後、意気消沈するかに思われた面々は、やけ酒とばかりに再びドンチャン騒ぎを始め、全員が酔いつぶれ寝付いたのは朝方であった。

朝の冷たい空気と薄っすらとした日差しに目を醒ました奥は、寝起きのぼんやりとした頭で辺りを見回す。
昨夜の惨状が未だ名残を残しており、起き出した者は皆、頭を重たそうに抱え顔色が芳しくない。

ボソボソと話声が耳に入り目を向けると、開け放した窓傍に山川と小川が座って話をしているのが見えた。
小川はやはり仏頂面をしている。
のそりと起き上がり近付くと、小川が気付いて軽く手を挙げ笑顔になる。山川も気付き微笑を浮かべた。
昨夜の出来事が頭をよぎり、一瞬足が止まる。
それを見て山川が、意地悪そうに笑みをこぼした。
奥はそんな山川に憮然とした顔を向け、小川の隣に座る。

「起きたか。酒は残っとらんやろうな?」

昨日の事には触れずに小川が軽い口調で尋ねてくる。

「又次こそ大丈夫なんか?…山川さんも」

小川には軽口で返すが、山川には若干躊躇いながら話し掛ける。

「あれぐらいで」

山川は気にした素振りもみせずに余裕綽々といった感じで笑った。

「当たり前やろが」

小川も負けじと胸を張る。

「そうだ奥、お前京都はわかるか?」

山川が不意に問い掛ける。

「残念ながら…」

申し訳なさそうに言う奥に今度は小川が

「じゃあやっぱ保鞏は山川と行動してもらうか…」

「え?」

山川と二人で、という言葉に反射的に反応してしまう。
そんな奥に山川と小川の視線が集まり、山川は思わず声を上げて笑い出し、小川は溜め息を漏らした。

「いきなりとって食いやしないから安心しろ」

山川は笑いを納めきれないまま言い

「ほれみろ!保鞏は冗談が通じんっち言うたやろが!」

そんな山川に、小川が山川の肩を叩いて突っ込みを入れる。

「…昨日のは、又次もグルやったんか…?」

奥から不穏な空気が漂うのを察知した小川は、引きつった笑顔を浮かべわざとらしいまでに明るい声を上げ

「それはともかく!」

畳の上に広げられた京都の地図に視線を落とす。

「今話よったんやけど、山田が行きそうな場所に大体の検討を絞って虱潰しに当たる」

懸命に話をそらそうとする小川に、山川はまた含み笑いを浮かべ、奥は大きく息を吐いて気持ちを入れ替えた。

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あきゅろす。
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