捜索一日目(5)
奥は注がれた酒を見

「そういう訳では…しかし今回の事はあまりに不可解です」

考え込む様に話す奥に山川は、不適な笑みを浮かべ

「潔癖なお前では真相を知った所でやる気を失うだけだ」

突き放す様な口調ではあったが、奥は山川が自分を思ってそう言っているのだとわかっていた。

「俺は知らない方が良いと?」

「決めるのはお前だ」

挑戦的な眼差しで奥をじっと見る。
奥は少しだけ考え込んでいたが山川に視線を向けると

「お願いします」

と腹を括った様に言った。
山川は奥がそう言うであろうとわかっていた顔で苦笑いし

「聞いたら余計やる気なくすかもな」

「え?」

それを今更言いますか、という心境である。

二人して酒を呑みながら話は進む。

「奥は男色は知ってるのか?」

含んだ酒を噴き出す。

「何やってるんだ…」

山川は呆れ顔を浮かべる。

「いや、すみません」

むせながら謝り

「何ですか突然…」

「知らんだろうな」

確定的な物言いに多少ムッとして

「男色くらい知ってます。男同士でって…あれでしょう?」

山川はフッと鼻で笑い

「言葉の意味じゃなく、男とやった事があるのかと聞いたんだが…」

なさそうだな、と言外に匂わせる。

「…ありません」

奥からの回答は予想通りであった。

「まぁそういう事だ」

察してくれと言わんばかりの山川に、奥は頭をフル稼働させ一つの考えに至る。

「山川さんは経験があると…」

「そこじゃない!」

すかさず山川から杯が飛んでくる。
それを身軽に交わすと、後ろの酔いつぶれの頭に当たったが、起きる気配は微塵もなかった。

「顔赤いですよ山川さん」

茶化す奥に怒りながらも半分照れ隠しに「うるさい!」と言い返し山川は徳利ごと酒を煽る。
珍しくうぶな反応に奥から笑みが零れる。
それも一瞬の事で、奥は表情を静め

「つまりは山縣大将と山田中将がそういう関係だと…」

途中で言葉を区切り酒を呑む。

「大体そういう事だ。もっと複雑だがな」

忌々しそうに言う山川に

「確かに山縣大将の職権乱用ですね…それで動く軍にも問題はありますが」

奥は深く溜め息をつき、また酒を呑んだ。

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