捜索一日目(4)
奥が会釈してから前に座ると、すかさず酒を進めて来る。
山地の隣に座っていた小川が奥に杯を差し出しながら

「まずは旅の疲れを癒せ」

先程の不機嫌さは微塵も見えない。
素直に杯を受け取り山地の酌を受ける。

「すまんのー、こがなトコまで。頼りにしちょるきに」

「有難うございます」

言うと一気に酒を飲み干した。
山地へ返杯し、更に返杯を受け、時々小川にも酒を注ぎ注がれといったやり取りを繰り返し、暫し談話する。

奥が来る前から呑んでいた様子の山地は、かなり酔いが回っている風であった。
これはいかん…と奥は気持ちを改め

「山地指令、今回の任務は一体…」

山地は奥の言葉を聞いて真剣な顔を作ろうと思った…かどうかはわからないが、質問に答えるには些か酔い過ぎていた。

「んにゃんにゃ、そいたら事は明日やき」

フラフラしながら自分の杯…何時の間にか湯呑みになっているが、酒を注ごうとして零している。小川を見ると大して変わらない様子であった。
奥は室内を見渡した。
死屍累々とはこの事か…酔いつぶれている者がかなり…大多数いる。

何時の間にか山川が戻って来ているのが目に入った。
小川に目をやると半分寝こけている。
苦笑いし奥は立ち上がって山川へ近付いた。

山川は一人チマチマと呑んでいたが、奥に気付くとその手を止め

「何だ、あまり呑んでないのか」

そういう山川もあまり呑んでいる様には見えなかった。
山川は、呑むか?と言う様に徳利を差し出す。
奥はその辺に転がっている杯を手に取り、山川の酌を受けながら

(山川さんなら何か知っとるかもしれん)

そう思い立ち、口を開いた。

「山川さんは今回の話、どうお考えですか?」

杯一杯に酒が注がれると、今度は奥が徳利を持ち山川に酌をする。

「どう…とは?」

注がれる酒を見つめながら山川は逆に問い掛けた。

「山田中将の探索…何故軍が動く必要があるんです?」

山川はグイと酒を飲み干し

「山縣の職権乱用」

短く答えて再び酒を進めて来る。
奥は一息に杯を空にし

「では、何故そうまでして山田中将を探すんです?」

山川は奥に酌した後、自分の杯にも酒を注ぐ。
その酒をまたグイと飲み干し、奥の瞳をじっと見る。
奥も山川から視線を逸らさず真剣な眼差しで見返した。
山川は不意に苦笑を浮かべて目を逸らし

「知らない方が良い」

とだけ言って手酌で呑みだした。
奥は怪訝な表情を浮かべる。
奥にまた酒を進めながら山川は

「納得しないまま任務はこなせないか?」

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あきゅろす。
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