地平が織り成す夢物語
誓いの口付け(悪魔)
「…名前ハ、ナント云ウ?…」
「……名前…」
「……名前カ。…気ニ入ッタ、力(ちから)ニナロウ。」
目の前の"彼"は私を真っ直ぐに見つめている。
その緋い瞳と聞き慣れない異国の響きに少しだけ怯える私の肩に、"彼"はその手を置いた。
「……名前、口付ケヲ。」
「………え?」
「……誓イノ口付ケダ。我ガ力(ちから)ヲ貸ス、ソノ契約の証ニ。」
何かの冗談かと思ったが、"彼"の瞳を見返すとそこには紛れもない真剣な焔があった。
「…名前…。」
ゆっくりと、"彼"の顔が近付いてくる。
それと同時に、肩に置かれていた手に力がこもり、顔に比例して引き寄せられていく。
もはや、逃げても無駄だろう。
そう確信した私自身も背の高い"彼"の唇へゆっくりと近付いていく。
「……んっ……」
互いの唇が触れ合い、生の温かさを感じた。
…その時。
「……っ!」
突然、"彼"の手が頭の後ろに回されて触れ合うほどだった唇が今度は押し付けられる。
思わず唇には力がこもったが、"彼"の舌の方が一枚上手でいつの間にか歯の間すらすり抜けて、私の舌を捕まえていた。
ざらざらとした"彼"の舌が、絡まり、上顎を撫ぜ、唇は啄むように動き、私に深い口付けをおくる。
あまり経験したことのない情熱的な口付けに、私は放してくれと言わんばかりにその胸を押した。
「……名前……」
「…はぁ、…っ……」
「…スマナイ、感情的ニナッタ…。」
息遣いを荒くする私から目をそらして、謝る"彼"。
「…長イ間独リデ、人ノ温モリニ触レラレルコトガ嬉シカッタンダ……シカモ、永遠ニ傍ニイテクレルトナルト、尚更ニ…」
「……」
「…名前、契約ハ終了シタ。君ヲ全力デ守ルト約束シヨウ。」
焔を宿した瞳が、真剣に私に語りかけた。
「…ええ。……"シャイターン"…。」
09*12*06
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