地平が織り成す夢物語
死せる跡(紫狼)
「…エレ、フ……」
生温い風が、頬を凪ぐ。
痛みを覚える箇所に触れてみると、そこから紅い血と一緒に命が流れ出しているのが分かった。
世界が暗みを帯びて歪んで往く。
「……エレフ…っ…」
口から零れるのは愛しい人の名前だけ。
今は何処に居るんだろう、何処で戦って居るんだろう…
段々と薄れていく意識の中で、エレフの顔を思い浮かべる。
私の腹部を貫いたのは、アルカディア軍のものだった。
つまりは敵であり、エレフの妹・ミーシャの仇。
仇を討とうと誓いながら、その刃に倒れるなんて情けない。
…こんな私を、貴方は許してくれるでしょうか…?
…エレフ…
…嗚呼、運命は残酷だ。
それでも、運命に抗わぬ者達に光は差さない。
運命(Moira)が戦わぬ者に微笑む事など決して無いのだから…
……漆黒。
09*06*30
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