地平が織り成す夢物語
誘う指(冥王)
目の前に倒れた亡き骸。
さっきまで見えていた黒い影は姿を消し、それと同じにして彼等の生の光も消え去ってしまった。
…涙が止まらない。
目の前に倒れた亡き骸達は、私の愛する者達だったから。
「…何故…どうして、こんな事をするの……神様……」
呟いた言葉は誰にも届かない。
この世界に心優しき神など存在しないのだから。
「…名前…」
「…!…だ、れ…?」
涙のせいで視界が歪む。
遠いようで近くから聞こえてくる低い声。
背中に恐怖が走った。
「…名前…Θハ…冥府ノ王ダ…」
「…冥府…?」
「…ソウダ…Θハ、ォ前ヲ向カェニ来タ…。冥府ハ死ス者達ノ世界…ォ前ノ愛スル者達モ、直ニ冥府ヘ現レルダロゥ…」
ゆったりとした話し方。
自称王であるだけさすが堂々としている。
「…冥府ヘ行けば、皆に会えるの…?」
「…ォ前ガ我ガ世界ニ来ルトィゥノナラバナ。…サァ、ォィデ…」
長い腕が広げられる。
白い指が、私に向けて伸ばされる。
「…サァ……名前……」
誘う指-izanau yubi-
09*06*29
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