地平が織り成す夢物語
詩う理由(冬天秤)
私は知っている。
貴方の哀しみを、微笑みを、涙を、歓びを。
全て抱き止めるために、私は今、ここにいる。
……けれど。
「…ねぇイヴェール?」
「なんだい?」
優しげな彼の瞳。
憂いにも似たその表情を、私はずっと見続けてきた。
「…何故貴方は、歌い続けるの??」
「……どうしてそんなことを聞くのかな?」
……貴方が歌う理由を、私は知らない。
貴方が此処に来た理由も、貴方が見てきたものも。
「………ねぇ、どうしてなの?」
「……どうしてだろうね。」
イヴェールは意味深に微笑むと、その華奢な手を私の頭にそっと置いた。
優しくその手が左右に動く。
「…君が此処にいてくれる……そんな今を失くしたくないから、かな?」
「……イヴェール…」
「…なんて、ね。……でも、君が居てくれるのが嬉しいのは本当だよ。」
くすりと零れた笑みが彼の唇を染める。
「………ずっと、傍にいてね?名前…」
詩う理由
10*01*09
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