地平が織り成す夢物語
希望-ελριξα( 獅子)
遠い世界で、誰かが私を呼んでいる。
「……名前、名前…!」
ほらまた。
「……名前…っ!!」
…ねぇ、お願い。
とても眠いの。
眠らせて……
腹部に広がる痛みが 、私を現実へと引き戻した。
「…名前!」
夢で聞こえていた声が、さっきよりも鮮明に私の名を呼ぶ。
「……レオ、ン………?」
「…良かった。目が覚めたのだな…」
気付けばそこはレオンの腕の中。
抱きしめられていると気付いたら、同時に痛みが襲った。
「…っ!…ぁ…ぅ…」
「……!…すまない…」
白い包帯に、じわりと浮かぶ紅い跡。
「……私…」
…思い出した。
私はレオンと共に、戦場で戦っていたんだ。
そして、敵軍の矢に射抜かれた。
「……どのくらい眠ってた…?」
「…ちょうど3日程だな。いくら呼んでも起きないから本当に心配したんだぞ?」
レオンは静かに、手を私の心臓の上に置いた。
大きな手が、命を刻む音と共に上下に動く。
「…この動く心臓だけが、唯一の希望だった。たとえ名前が眠ったままでいても、この音だけが名前の生を教えてくれた。」
「……レオン…」
「………本当によかった……生きていてくれて…」
09*12*29
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